小ネタ日記ex

※小ネタとか日記とか何やら適当に書いたり書かなかったりしているメモ帳みたいなもの。
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雨の中で(デス種/アスラン)。
2005年06月25日(土)

 ずっと迷って、気付いたら手を離していた。








 三人を蹴り飛ばし、二人を奪った銃で撃った後はもうカウントするのを放棄した。
 雨音は足音と銃声を薄れさせてくれる。加えて日暮れ後の闇は、アスランにとってまたとない味方になってくれた。作戦行動前の基地は武装兵で溢れ返っている。じき自分が二度目の逆賊になったとの通知が広まるだろう。
 兵舎の非常階段に置き去りにした歌姫の身代わりのことが気にかかったが、今は自分のことだけで精一杯だ。雨に濡れながら人通りを避け、別棟の兵舎の脇を走りながらこれからのことを考えた。
 どこに行くのかと問われれば、答えは一つしか出てこない。
 ―――アークエンジェルへ。
 今になって、親友の言葉を認めたがる己に、アスランは自嘲の笑みを浮かべた。どうしていつも、気付くのはこんなに遅い。
 自分の背よりも高い鉄の格子を助走をつけて飛び越える。身を潜めて遠くに見える動く明かりをやり過ごすと、一般兵舎の非常階段を一気に三階分駆け上がった。下方の舗装道路に軍用ジープが何台か港に向かって走っていくのが見えた。
 思った以上に議長の手配が早い。たった一人を捕らえることだけに何人を動かしているのだろうか。これも自分への一つの評価かと、アスランは到底自慢にならない現実に息を吐いた。
 冷たい雨は心まで冷やそうと躍起になって降ってくる。逃げるには便利だと思ったが、自然環境は決して人間に媚びへつらうことはない。
 南国のスコールを思い出す。唐突にやって来ては豪雨を降らせ、気まぐれに去っていく。あの国、あの雨の後の清らかな空気。
 不意に開きかけた口を、アスランは強い意志で無理に閉じた。今となっては楽に口に出来なくなった南国の少女のすがたが、夜の雨の向こうに浮かんだ。
 金の髪の少女は、今の自分をどう思うだろうか。
 見損なうだろうか、それとも呆れるだろうか。どちらにしても無様なことに間違いはない。冷静に受け止めてはくれないだろう。

『オーブへ戻るんだ』

 今になって、あの夕暮れの海での自分の言葉を思い出す。今になって、あれがどれだけ酷薄な響きを帯びていたかを痛感する。
 いつだってそうだ。ひとの痛みに、自分はこんなに後になってから気付く。
 なぜカガリがあの国を出ることになったのか、なぜキラが罪を被ってまで妹を攫ったのか。理解出来ないと思っていたのは、アスランが彼らの言葉を最初から否定していたからだ。そして彼らがアスランを否定していると思い込んでいたからだ。
 自分の本当の望みは何であったか。
 一拍の息を肺まで吸い、拳を胸に当てるとアスランは目を閉じた。心臓の音のその奥、鮮烈に見えるたくさんの面影。雨の音はここまで迫って来れない。
――アスラン』
 名を呼んでくれる、やさしい声はいくつも重なる。
 キラやカガリを守りたいと願った思いは今も色褪せない。そのためにザフトに戻った。世界の平和の中に、彼らも在った。
 ―――だから、ここでは駄目なのだ。
 彼らのところに行ったところで自分がどうするかは、アスラン自身にもわからない。胸を張るのか、頭を下げるのか、そして彼らの反応も、まるでわからない。
 それでも、一緒に考えようと言ったキラを信じている。滑稽なほど、兄弟のように育った幼馴染みを信じている。金の髪の少女がもたらしてくれる、満ち足りた優しさを信じている。あんなに傍にいるだけで己の力を信じさせてくれる二つの存在を他に知らない。
 今度こそ、共に道を探したい。一緒に生きたい人たちと、同じ道を。
 群青の髪から落ちる雫がアスランの頬に落ちる。闇はますます深まっていく。彼は面を濡らす水を手で振り払い、自分が選んだ道へと走り出した。








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 ひとりアスラン祭開催中です。
 36話『アスラン脱走』前提で。
 MS戦より銃撃戦より何より、肉弾戦アスランが好きです。
 …ごめん、私カガリを蹴飛ばしたりダコスタ君を仰天させたアスラン・ザラが好き…(@無印)。

 脱走ってことはー…と、結構ぶん殴ったり蹴飛ばしたりするアスさんを期待していたのですが、見事叶っていやっほうな気分です。ぎゃーかっこいいよアスランのくせに!(素直に褒めろ)
 ミーアやメイリンに手を差し出すあたりがまた彼らしかったです。
 そんなデス種36話、『アスラン脱走』。

 今週はミーアも期待方面の反応をしてくれて好感度急上昇です。どこまでも『ラクス』でありたくて、『ラクス』で居続けることを選んでくれてありがとう。しかも平然とじゃなくて取り乱してまで固執してくれてありがとう。
 ぎりぎりの欲望に罪悪感も未来も何もかも吹っ飛ばしたキャラは結構好きです。
 まあ、ミーアもついてくることになって、メイリンといい、女の子二人連れでアークエンジェルに戻ってきたアスランをあっちの人たちがどういう目で見るかと想像するのも楽しいんですけど。

 議長については。
「お前がキラを語るんじゃねぇ!!」
 とでも言いたげな、ザラさんの苛烈な目が面白かったです。
 わざとなのでしょうが、議長の語り口は相手に同意しているようで最終的に自分のいいほうに持っていく、まるでクレーム処理のような話術ですね。

 …にしたって、シンの扱いが。どうせなら銃持ってアスラン追っかけるのがシンならよかったのに。事情知ってるのがレイだからってさ、こういうときこそ主人公特権が欲しい、せめて(そんな特権はキラにしかない)。
 来週はMS戦なのが残念です(作品根底を覆す発言)。




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