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うたかた(デス種/アスランとカガリ)。
2005年06月19日(日)
光があってこその影法師。
夕暮れの海は地球の丸さを思い知らせてくる。
夜の女神のドレスの裾が東から広がり、西の太陽の残照を少しづつ覆い隠していく。夜明けとは真逆の黄昏。一日の終わりが始まる。
海原から吹き付けてくる風がアスランの前髪を乱し、首筋をくすぐって通り抜けていく。
「アスラーン!」
ほぼ波打ち際を歩いていた金髪の少女が、不意に振り返ると笑って手を振った。
彼女はアスランに用事があるわけではない。ただ離れて歩いている彼に声を掛けるためだけに笑っている。
「カガリ、あんまり深いところまで行くなよ!」
白いふくらはぎをむき出しにして海水とじゃれあっている少女に、アスランは声を張り上げた。
ところが彼女は、笑って一蹴する。
「わかってる! 私はここで育ったんだぞ!」
つい少し前まで地球の海を知らなかったアスランに言われなくても、ということらしい。
事実である分だけアスランに反論の余地はないが、護衛としてこのお転婆姫に注意することは必要なのだ。
さざめく潮騒と、砂を含んだ海の風。この国に来て最初の頃はこの潮風に辟易したものだったが、気付けば慣れた。人間の順応性は、人工的な遺伝子を持つコーディネイターといえどもそう大差ない。
幼少の頃から一人でも海で遊んでいたというカガリは、十代後半になってもその癖が抜けない。砂遊びに没頭するわけではないが、夕暮れの海を歩くことは彼女にとってストレス解消の一種らしい。
六角に伸びた水晶のようなあのカガリの真っ直ぐな気質は、このオーブの太陽と海が育てたのだろう。彼女はまぎれもなく地球の少女だった。
沈んだ太陽の残った光だけでも、カガリの金糸の髪はよく見える。わずかな光でさえ浮き立ち、夜にまぎれない。
「カガリ、そろそろ帰るぞ」
もう戻らなければ、夕食の時間に間に合わない。
時計を確認したアスランが彼女に声を掛けると、アスハの若い当主は不満げな表情を寄越した。
「ええ? もうそんな時間か?」
「今日は明日の準備もあるから早めに帰るよう言われてただろ」
「めんどくさいなー」
口ではそう言いつつも、明日の朝から視察の任を負う少女は裸足のままアスランの近くまで駆けて来る。潮になぶられた金の髪と、砂だらけの白い足。
こうしていれば、ただの一人の娘だというのに。
「ちゃんと足拭けよ」
「はいはい」
車からタオルを持ってきたアスランがそれを放ると、カガリは半乾きの肌から砂をはたき落とす。
国民はまさか自分の国の姫と仰ぐ少女がこんなところで海遊びをしているとはあまり想像していないだろう。
何気ない黄昏は毎日訪れる。空はその下の地表がどうなっていてもその色も移りゆく様も変化しない。
ただの夕暮れと海の色。同じ景色の中、二人の影が夜に消えていった。
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で、オチは?(………)
アスカガで小ネタって実はむずかしいです(私にとっては)。
ここ最近使っていなかったワープロを出してカタカタ打ってたんですが、やっぱ使い込んでるのはいいわ…としみじみしました。
あとワープロだとパソコンと違って、ネットに逃避しないので書くときの集中力が違うと実感しました。いやむしろ反省。
調子が悪いのが難点なのですが、ワープロ後期のものでまだメーカーで修理受付してくれるようなので、早いうちに修理に出そうと思います。FDを時々読み込んでくれないから…。
あとワープロだとパソコンのネット辞書が使えないので、アナログ辞書を使わなければならないのがちょっと面倒。人ってこうして楽を覚えていくんですね。
むしろワープロで一番楽なのは、ワンタッチ電源のところですよ! 立ち上げが一瞬。パソコンみたいに一度落としたらまた立ち上げるまでの時間がかからない(←ものぐさ)。
たぶん次回の更新あたりは前みたいに、
ワープロで書きtxtでフロッピーに保存 → PCでhtmlタグ打ちしてアップ
…という手法に戻ると思います。
メモ帳で全タグ手動打ちサイトです。
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