小ネタ日記ex

※小ネタとか日記とか何やら適当に書いたり書かなかったりしているメモ帳みたいなもの。
※気が向いた時に書き込まれますが、根本的に校正とか読み直しとかをしないので、誤字脱字、日本語としておかしい箇所などは軽く見なかった振りをしてやって下さい。

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三年めの春(テニ王/手塚と不二)。
2005年03月17日(木)

 世界のどこかで花を見る。








 道路脇の電灯からの明かりが細い道を照らしていた。
 手塚の数歩前を体重を感じさせない軽やかな足取りで不二が歩いている。調子が上がってきたのか、早足になりがちな不二の白いシャツが夜目にほわりと浮いて見えた。
「…全く、お前も何年経っても勝手なところがあるな」
 大分長い付き合いとなって、手塚もそろそろ不二の自由気ままなところを把握していたが、何事かに巻き込まれるたびに嘆息したくなる気持ちは同じだ。
 不二がその癖のない髪を揺らして振り返る。いつもと同じやわらかな笑顔だった。
「そうかな?」
「そうだ。あれほど夜八時以降に来るならまず電話をしろと言っているのに、なぜ守らない」
「だってわざわざ電話のために五分使うよりも、歩き出したほうが早いし」
 時間の節約だよ、と3月にしては薄着の不二に手塚は口端を曲げ、さらに目を細めた。
「それから、ちゃんと前を向いて歩け。転ぶ」
「はいはい」
 おざなりな返事だったが、言われた通り不二は前を向く。その若干歩みが遅くなった隙に手塚はその隣に追いついた。
 夜風は早春の肌寒さを感じさせ、冬物のジャケットを着た手塚の格好で丁度良いぐらいだ。それに引き換え長袖のTシャツの上に一枚引っ掛けただけの不二の体感温度は相応であろうに、彼は平然とした顔で歩いている。
「寒くないのか」
「うん。大丈夫」
 言葉の上では平気そうだが、手塚はやはり先ほど家を出るときに何か一枚持ってくればよかったと後悔した。これまで夜八時過ぎに突然不二がやって来るのは幾度もあったが、そのたびにいつも慌てる。
 そんな手塚が慣れることのない夜半の訪問者は、玄関先で笑いながら夜の散歩に誘うのだ。
 若い女性ならともかく、男の二人連れが夜中歩き回ったところで家族もさして心配しないが、意味なくうろついては逆に不審人物扱いになりかねない。そもそも昼型の手塚にとって夜中の活動はどうも苦手だった。
「今日はどこに行くんだ」
「公園」
「公園?」
「そう。そろそろ桜が咲く頃かなーって」
 手塚が隣の不二のほうを見ると、身長差によって彼の伏せがちな睫毛がよく見えた。繊細そうな面差しをしているくせに中身は大雑把なところがある、と以前言ったらただ笑い返されたことを思い出す。
『君もひとのこと言えないと思うよ?』
 失礼なことを言う、確か自分はそのように答えたことを手塚は記憶している。あれはもう随分前のことだ。
 あのときも春だった。
「お前は、毎年この時期になると夜桜を見たがるな」
 そして毎年連れ出されている、もしくは付き合わされていることを手塚は暗にほのめかしたつもりだが、不二は軽く声を立てて笑った。
「まあ、好きだからね。夜桜のほうが。神秘的というか、あやしげで」
「昼のほうがよく見えるんじゃないか?」
「そのよく見えないところが好きなんだよ」
 よくわからない、という気持ちを込めて手塚が押し黙ると、不二はその空気を敏感に悟り口を開く。
「昼だと、周辺の余計なものも見えるでしょ? あれがあんまり好きじゃないんだ。花は花だけ見えてればいい。桜は白っぽいから、夜なら花だけが見える。そこがいいんだ」
「…なるほど」
 実に不二らしい、あやうさを感じさせる考え方だと手塚は思った。
 幽玄という印象を相対する者に抱かせる不二は、そのまま春の宵の空気がよく似合う。物柔らかな風と、ほんの少し寂しげな夜の藍。
「それだけを思っていられる時間、ってなかなかないと思わない?」
 ふと見上げられ、手塚は言われた内容を心で考える。
 確かにどんなものであっても、それだけを心に占めていられる時間はあまりない。何を目の前に置いても、日常や現実で生きている以上あらゆることが必ず脳裏に存在する。自分たちにとってその例外はせいぜいテニスぐらいだろう。
「…そうだな」
 認めた自分が笑おうとしたことに手塚は気付いた。
 花は花だけ見ていられればいい。そう言い切る不二のわがままさに、強い意志に、手塚はいつも自分にないものを彼の中に見る。頑なな手塚を、その笑顔と掴んだ手でどこかに連れ出す。
「ね? だから、夜遊びもいいもんでしょ」
「いや、それに関しては違う。夜はちゃんと寝るものだ」
 夜半の誘いを正当化しようとした不二に、手塚はそれだけはとしっかり釘を刺す。ここでそれを許せば、この先この笑顔にどんな騙しを受けるかわからなくなる。
「そっちこそ、何年経っても頑固だね」
 はは、と笑った不二の頬を強い風が撫ぜ、彼が一瞬眉間に皺を寄せたのを手塚は見逃さなかった。
「寒いんじゃないのか?」
「寒くないよ」
 早すぎる返事が不二の意地であることぐらい手塚にもわかる。
 彼はためいきをつく前に、不二の肘のあたりを掴んで今きた方へ向かせた。
「手塚?」
「一度戻るぞ。何か貸してやるから、それを着たらもう一度行けばいい」
「えぇ? 面倒だからいいよ」
「駄目だ」
 どうせ今自分のものを貸すと言っても、不二に素直に受け取るほどの可愛げはない。
 問答をするのも億劫で、手塚は先に歩き出すと不服そうに立ち止まっている不二を肩越しに見る。
「行くぞ」
「…………」
 ややあって、小走りに追いついてくる頭ひとつ低い影は、手塚に向かってわざとらしく息を吐いた。
「横暴じゃないかな、そういうの」
「自己管理しようとしないのはどっちだ?」
「そうだけ、ど」
 悪いのはどちらだ、と手塚は言いたかったが、口を尖らせてつまらなそうな顔をしている不二の顔を見て言うのは止めた。
 その代わりに、彼は仕方なく譲歩することを決める。
「明日休みの分だけ今晩は付き合ってやるから、少しは言うことを聞け」
「わりと聞いてると思うんだけど、なんだかんだで」
「その前が問題なんだ、その前が」
 口が減らない相手を相手にし、湿った春の宵に手塚の黒髪が揺れる。
 どこからか香る花の匂いの中、二つの影が夜の世界に並んでいた。








************************
 …昔書いてた手塚と不二ってこういうのだったなー…という、私の三年目の本気(…小ネタで本気?)。思い返せばテニス離れをしたのはそのぐらいの時期でした。

 ところで先日、友人の林さんとこういうやりとりをしたんです。
要約:
「テニスの塚不二の新作書いて下さい」
「塚不二イラスト描いてくれたらいいよ」
 長い付き合いって遠慮も何もないですネ!
 こっちも書くからそっちも寄越せ。ハイこれ基本。ギブアンドテイク。友情も突き抜けるとお互いに何系が得意かとかわかりすぎてて、ねだることに躊躇しません。
 というわけで。
 私もう書いたからそっちも約束忘れちゃイヤよー!!(私信)
 …ところでもしやとは思いますが、私に十人中十人がまごうことなき塚不二だと認めるようなものを求めてない、よね…? ベッタベタなホ○を私に求められても無理、です!(力いっぱい)
 塚不二と言いつつ、路線としてはどこまでも手塚&不二。この二人はいつでも大好きだ。青学万歳。

 そうそう、本日でサイト3周年です。ありがとうございます。
 わりとかなり早く過ぎたような気もしますが、3周年です。でも書いたのはテニスです。…何この最近の状況を示すみたいな小ネタ。

 つい先日改めて思い知らされたのですが、私の好きカップリングというのは大概わかりやすいです。

 堅物真面目系、ヘタレ属性、どこか鈍感、エリート系
             ×
 可愛い顔で男前、意地張り子、一部に弱点、強気で強情

 私的黄金公式です。
 どっちもプライド高い同士だと尚よし。上記公式の条件のうち2つ以上ある同士が、この公式通りだと認定されます。
 それで当てはまるのが、笛で言うミズユキであり三渋であり、種のアスカガであり、テニスの塚不二です(三渋はちょっと変則的かもしれませんが)。
 そして友人たちから力一杯この公式の存在を認定して頂きました。
 その前に口をそろえて「塚不二はどこまでも君の好みそのまんまだ」と言われました。うん、その通り。真面目に考えるほどこの二人ほど理想的な組み合わせを知らない(注:カップリングではなく組み合わせ)。
 数年間離れて再び塚不二ゾーンに囚われつつある今日このごろ。
 久々にあの発売当初物議を醸した10.5巻を読みました。…手塚が左利きであることすら忘れていた私に、出戻りをする資格はあるでしょうか。
 こうなったきっかけは何でしょう。
 オフィシャルって偉大。

 そうそう、やっと愛機太郎が戻って参りました! 思ったより早かったですが思ったよりお金かかりました。言えません。ちょっと言えない金額です。わ、わたし春コミどうやって行こう…。
 中身は完全に無事でしたので、出し惜しみせず出せるものを全部上げてみました。でも微妙ラインばっか…。

 何はともあれ3周年です(何なの今日の日記…)。
 今更ですが3年間何やってたかを一番よく表すものとして、7月渋沢月間のログなんてものをトップに出してみました。お題はすべて渋沢と○○。小ネタ日記最多数キャラ、渋沢克朗。
 そりゃー森サイトって言われる、ねー。
 そして今は何サイトだ(文章サイトです…)。

 まぎれもなく管理人の萌えと勢いが先行し、別ジャンルに興味を寄せても潔く閉鎖してやり直す覚悟もないヘタレサイトではありますが、四年目も仲良くして下さると嬉しい、です…(自信なさげ)。三年間ありがとうございました(過去形にするな)。
 いやでも本当に、ありがとうございます、です。
 やっぱりですね、自分が書いたものを好いて下さる、というのは本当に嬉しいんですよ。二次でもオリジナルでもわざわざ限りある時間を私のサイトに割いて下さっているだけで嬉しいのに、メールまで下さるとむしろ大事な時間をこのサイトなぞのために…と心から有り難く思います。
 技量の点はまあ相変わらずアレなんですが(精進したい…)一つ一つこれからも私なりに書いていきたい、と思います。
 今も昔も私が目指すのは「やさしい文章」なので、読み易く、読後が心やさしくなれるようなサイトを目指したいです。




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