小ネタ日記ex

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紅に祈る(笛/渋沢克朗)(種パラレル)。
2004年11月17日(水)

 それは広大だけれども有限の場所。








 深遠の虚空が小さな艦を押しつぶしてしまいそうだった。
 小さい頃初めて地球の海を目の当たりにしたとき、こんなに広いものは他にはないと思った。しかし歳を経て宇宙に出てしまえばこれ以上広いものを自分は知らない。
「隊長」
 つい二日前の辞令により、部下となった少年が渋沢に話しかけてきた。
 汎用人型兵器―一般にモビルスーツと称される全長十五メートルを越える武器が並ぶ格納庫で、渋沢は人に似せた人ではない兵器を見上げていた。
「どうした、笠井」
「カーペンタリアから連絡がありました。クルーゼ隊、間もなく到着するそうです」
 一般兵とはデザインこそ大きくは違わぬものの、色を変えた制服の部下の報告に渋沢は表情を変えることなくうなずく。白い軍服の裾がわずかに揺れた。
 そのまま格納庫の入り口から歩いてくる部下に、渋沢は促すように再度MSを見上げた。
「GAT−X303”イージス”だ」
 鋭角的なシルエットをした機体は、今はパワーオフになっているのか鋼色をしているだけで映像資料にあった紅色の面影はない。これが紅に染まるとき、人の命を刈る死神となって空を駆ける。暁の鬼神。
「これが…イージス」
 見上げた赤い軍服の部下に、渋沢は短くうなずく。笠井の声音にある感嘆とかすかな脅威を感じ取ったのか、ふと小さく笑った。
「まったく、モルゲンレーテは相変わらず侮れないな」
「オーブは中立とか言っといて、こんなの作ってたんですか…」
「それでもOSはこっちでかなり書き換えたそうだから、もうナチュラルには乗りこなせないだろうな。…乗ってみるか?」
「じょ、冗談言わないで下さいよ…!」
 茶目を利かせたとはいえ、とんでもないことを言い出した渋沢に笠井が慌てて手を振って否定した。
「お前だってMSの訓練は受けただろう」
「そりゃアカデミーではやりましたけどね、そういう問題じゃなくて。預かりものですよ、これ」
 士官学校をトップ10以内の成績で卒業した者だけが着れる、赤を基調にし要所に黒を配した軍服の中で、笠井は大きく息を吐く。最新機に乗ってみたい気持ちはあるが、これの専属パイロットはもう決まっているのだ。
 次のランデブーポイントで合流する、笠井にとっては後輩に当たる代の隊員がこの敵軍から奪取した最新機で戦場に出るという。これの登場で戦局は大きくザフトに傾くと上層部は思っているようだが、果たして結果はどう出るだろうか。
「…戦争が科学の底を押し上げる、か。いつの時代でも皮肉なものだな」
 ふと物悲しげに言った上官に、笠井は驚いた視線を向けた。
「なぁ笠井、これが本当に俺たちを――
 渋沢の言葉は最後まで続かなかった。自分で自分を戒めるように目を細め、渋沢は軽く首を振った。
「いや、悪い、何でもない」
「…………」
 笠井には、士官学校時代から幾度も顔を合わせていた渋沢の意思が何となく読めた気がした。
 戦争が始まって一年足らずの間で、戦禍はただただ広がるばかりだ。勝利の報告があれば敗北の報せが届く。幾度もそれを繰り返し、最新と冠される兵器が次々と登場する。殺し、殺されて、疲弊しそうになる心を何度も叱咤しては次の戦場に向かう。
「街で十人殺したら殺人鬼、戦場で千人殺したら英雄だ。…大義名分とは随分都合のいいものだな」
「先輩!」
 一度言うのをやめたものの、とうとう言った渋沢に笠井は咄嗟に周囲に視線を走らせた。運が良いことに整備兵たちも声が聞こえる範囲にいない。
「…何てこと言うんですか。…危ないですよ」
 今のプラント本国では戦争を否定する人間が政治犯として粛清されているという噂もあるほどなのだ。純粋に渋沢の身を案じた後輩に、渋沢は悪かったと小さく笑いながら言う。
 それから彼はあの暗く静かな宇宙で紅に染まるだろう機体を真っ直ぐに見上げた。
「…せめてこれが、世界を救う何かになってくれたらいいよな」
 軽率な返事をしなかった賢明な後輩にではなく、何かに祈るような口調だった。








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 わりと私のパターンとしてはセオリーだと思います。
 そんな種パラレル笛。笛パラレル種でも可。
 ごめんなさい(土下座)。

 ザフト軍渋沢隊。
 前にカンザキさんとメッセしてたときに、この話が出て「いやでも渋沢に赤服って似合うの?」とか何とかあった気がしたので。
 地球軍にしてもよかったのですが、森ってエリート揃いだから何となくコーディネイターかなあ、と。オーブ防衛隊は制服デザインの点で却下です(所詮見た目ですか)。
 種の最初のほうでイージス含む4体を奪取したあと、研究所で色々整備とか強化とかして再びクルーゼ隊に返される、という設定を捏造しました。そしていくら私でも渋沢とアスランを一緒に書くなんて暴挙はしません。
 「笠井竹巳、バスター、出ます!」とか言わせる案もあったのですが。MSのなんたるかをいまいち把握していない私がMS乗りのシーンを書くのはどうなんだ、と自制が入りました。むり。絶対むり。日常生活でも機械に弱い私にメカなんて無理。
 目下そのうち使いそうになるオーブの政治形態を調べるので手一杯です。アスランが亡命したのはプラントじゃ父親の悪名の煽りで社会に関わるのを拒否された、っていうのが個人的推測なんですけど、どうなんだ。とりあえずザフトに戻ったら軍法会議ではないのだろうか…。

 じゃ、本業の論文に戻ります。




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