小ネタ日記ex

※小ネタとか日記とか何やら適当に書いたり書かなかったりしているメモ帳みたいなもの。
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ロングレイン4(笛/真田一馬)。
2004年11月06日(土)

 久しぶりに夕焼けを見た。








 ホームタウンでの試合は、地力のせいもあってか勝つことのほうが多い。
 これは昔から統計として散々言われ尽くされてきたことであって、今更新事実のように騒ぎ立てることではない。けれどよく使われる常套句として定着している。今日の俺のチームもその通りだった。
 ちょっとしたミスでイエローを食らいそうになった場面もあったけれど、点を獲ったこともあって個人の成績としては明日のスポーツ新聞でそう酷評されることもないだろう。点数にして6以下にならない自信はあった。
 そんな俺の他愛ない満足感が消え失せたのは帰宅してすぐだった。
 借りているマンションについてすぐ、エントランスの管理人室の窓から手招きする管理人の姿からその事態は始まった。

「不法侵入?」

 まさかうちには、なんて根拠のないことを思っていたのは俺の油断だったのかもしれない。
 俺を呼び止めた三人いる管理人のうちの一人は、加藤さんという。民間の警備会社に所属していて、ある程度防衛術とか格闘技の段を持っているらしいこの人はなかなかそう見えないほど小柄だ。見た目で威圧感を与えられないから、金融関係や店舗ビルには配属されなかったと聞いたことがある。
 その分社交術に長けているのか、ここの入居者とは誰でも気さくに話すし一度見た相手は忘れない。俺が預かっているあの同居人も、すぐ名前を覚えて行き帰りにと世間話をしていると聞いていた。

「いえね、何でも他の入居者の方の友達らしいんですけど、真田さんのファンだっていう子が直接お宅へ来たらしくて、彼女を見てちょっと揉めたらしいんですよ」

 俺が窓のほうに近づいたとき、加藤さんの後ろで椅子に座っていた影が立ち上がる。
 小柄とはいえ男の影に隠れてしまうほど華奢な姿。あいつだった。
 俺の顔を見て、何とも表現し難い顔をした後うつむいた横顔にはどこか憔悴したような色があった。
 何だ、それは。
 俺は思わず軽く唇を噛んだ。クラブハウスとここが大して離れていないこともあって、その辺で声を掛けられることはたまにある。だけどこういうのは、ルール違反過ぎる。

「そのここに住んでる人も一緒ですぐに帰ったらしいんですが、相手の子がちょっと興奮してたらしくて…」
「…どうもすいません」
「あの…それじゃあ私は、これで…」

 会釈したあいつが、椅子を片付けて管理人室から出てくる。その後ろに付き添ってくる小柄なはずの加藤さんが、いつもより大きく見えてしまう。
 俺の前に歩いてきたあいつは、うつむいたまま頭を下げた。

「…すみません」
「…怪我とか、なんかされてないか?」

 肩に手を乗せたのは無意識だったけど、思った以上の薄さに驚いた。首を横に振ったことでほっとする。
 だけど俺と目を合わせない様子が何だかやけに頼りなくて、布越しの体温が伝わってきて、触れた手が離せない。
 それから少し、俺と加藤さんで球団を間に挟んだ問題について話し合う間、俺の隣であいつはずっと黙ってうつむいていた。

「…では、こちらもしばらく注意するようにしますが、何かありましたらまた連絡して下さい」
「はい…」

 後半は俺だけではなく、俺の横にいる彼女へも言われたことだった。小さな声で答えてうなずくだけで、後は何も言わない。
 うつむいた横顔は髪で隠されたままで、表情がよく見えない。泣いてはいなかったけど、泣きたい気持ちでいることだけは何となくわかった。

「大丈夫ですよ」

 黙ったままの彼女に、優しく声を掛けたのは加藤さんだった。
 そうっと顔を上げたあいつに柔和な面差しを向けて、ゆっくりと喋る。

「少しびっくりしたと思いますが、しばらくすればまた落ち着いて生活出来るようにしますから、今晩はゆっくり寝て下さい。もう真田さんも帰ってきましたし、一人じゃないですよ」

 じんわりと、あいつの目が潤んでいくのが何となく感じ取れた。泣かないよう頑張っているのは明白だ。ここんとこずっと不安定だったこいつにとって、今日の出来事はかなりショックだったに違いない。
 今回ばかりは俺に責任はないなんて口が裂けても言えない。
 だけどそのときの俺に出来たのは、加藤さんに頭を下げたことと、体温の高いあいつの手を引いて、いつもの部屋に連れて帰ることだけだった。







 その夜、あいつは例の件についてあまり喋らないで、ともかく疲れたから寝たいと言い出した。
 明日ゆっくり話します。そう言われたら無理に聞き出せるわけもなくて、俺もわかったとしか言えない。だけど手と顔を洗って、部屋に引っ込む前にいつも通りの「おやすみなさい」が聞けたことは、俺をほんの少し安心させた。
 責めてくるとは思わなかった。俺のせいだと、言うはずがないんだ。
 だけどおやすみなさいの淡い笑みの後、うつむいた「迷惑かけてすみませんでした」なんて囁きが、俺の睡眠意欲を奪った。試合の後で疲れているのに、薄暗い天井の片隅でいつまでもあの見えない横顔が浮かんでは消える。
 気にしたら負けた。俺は自分の感情に負ける。
 だからといって何も考えず安眠も出来ず、鬱々とした葛藤を着替えた後の布団の中で何度も寝返りと一緒に繰り返していた。
 そのうちに、別の場所から水音が聞こえた。さくらとも違う。キッチンで水でも飲んでるのかもしれない。たまにそういう音が夜中に聞こえる。
 あいつは、夜ちゃんと寝ているんだろうか。
 部屋にいる時間=睡眠時間、ではないことを今更ふと思い出した。
 立ち上がって床に足をつくとぺたりと吸い付くような音がした。猫みたいに忍び足でドアを開ける。首を巡らすと、玄関から続く短い廊下の真正面、ベランダへのガラス窓の前に白いかたまりがあった。

「………おい」

 思わず声を出すと、かたまりがびくりと動いた。
 振り返った拍子にはらりと落ちる。夜目に白っぽく見える薄手の毛布を膝に落として、電気もつけないままあいつが床の上に座っていた。少ない光に戸惑う双眸が星みたいに瞬いた。

「さな、だ、…さん」
「何やってんだ? もう二時だぞ」

 電気をつけていない部屋の中央よりも、窓辺のほうが明るい。目を凝らして見たビデオタイマーの時間は午前二時過ぎ。小さな白い手が、困ったように落ちた毛布を肩まで引き上げているのが見える。

「…あの、ここなら、さくらちゃんと一緒に寝れるかと思って…」

 ぽそぽそ言う相手のすぐ脇に、うちの犬のいつものカゴがあった。その中で眠ってはいないが、眠る体勢で丸まって俺たちを見上げている真っ黒の目。
 何かを誤魔化すみたいに、あいつはさくらの頭を何度も撫でた。

「…すいません、朝にはちゃんと戻ってますから」
「それは…別に、いいけど」

 よく見ると、床の上に座布団を置いてさらにその上に膝を抱えるようにして座っている。眠るにしても楽な格好じゃないはずだ。
 近づいていいのか、少し悩んだ。

「…寝れないか?」
「……少し、です」

 結局立ったまま話すことを選んだ俺に、あいつは弱々しい笑みで答えた。

「大丈夫です。明日には、ちゃんとします」
「…説得力ねぇの」

 なんとなく苦笑してしまった後で、どんなかたちであれ俺にこいつを笑う資格はないと思い当たった。

「…悪かったな。俺のせいで」
「…どうして、真田さんのせいなんですか?」
「普通、俺のせいだろ」
「そんなことないです。大丈夫です。…ちょっと驚いただけです。真田さん、やっぱりすごい人だなぁって」

 なんで笑ってるんだよ。なんで、俺のことを感心してるんだよ。
 何か違うだろ、それ。
 外が明るいのが月明かりだと気付いた俺は、目が慣れてよりはっきり見えるようになった青白い笑みに、違和感と苛立ちを覚えた。目眩みたいな感情。静かに揺らぐ。

「…真田さんは、」
「何言ってんだよ」

 遮ったのは、きっと俺の気が長くないせいだ。
 違うだろそうじゃないだろ馬鹿にしてんのか。そんな思いが体中を駆け巡った。

「すごいわけないだろ」

 壁でもぶん殴って怒鳴り散らしてやりたかった。こいつは何もわかってない。
 違うんだ、俺は、感心とか尊敬とかされたいんじゃない。
 俺に関わったことで被った被害を、責められたいわけでもない。謝られたいわけでもない。
 月光の中、怯えたみたいに見上げてくるあいつの二つの瞳。不穏な空気を察したのかさくらが首を俺のほうに向けた。あいつの身体は、ほんの少し俺側よりも窓のほうに傾いていた。
 半袖から見える肘の白さ。初めて見たその皮膚の白さは今はただ青白いばかりで。

「…ごめんなさい」

 震えた声は俺にとって逆効果にしかならなかった。
 俺の感情は箍が外れるといつもこうだ。あいつの罪悪感を増長させている。
 謝らせたり屈服させたいわけじゃないと、なんで上手く伝わらないんだろう。
 握り締めた俺の手。解いたままの髪で俺を見上げている目。頼むから、そういう目で見ないで欲しかった。怒っておいて怖がるなとは言えないけど、そう言いたかった。

「…本当に俺が、すごい奴なら」

 そっちの言う『いい人』なら。


「もっと―――


 もっとちゃんと、落ち着かせたりとか、出来たんじゃないか?
 少なくとも不安定なときに興奮させて泣かせたりする、朝みたいなことはさせなかった。自分のせいで傷つけたらもっと上手く守ってやるとか、そんなことも出来ないで、何が。
 一歩踏み出したら後は同じだった。
 近づいて、膝を突いて、細い両肩を手で掴んだ。言葉もなく見てくる双眸を見るのは怖くて、悔しくて目を伏せたら最後に入ったのは薄い毛布で。


「…俺は、そんなに頼りないのかよ」


 何も話したくない、何も頼って来ないっていうのは、それが理由なんじゃないか。
 気になって、だけど言えなかった俺の不安。俺だけが一方的に、春先から始まったこの関係を嬉しく思い始めたこと。

 細い肩に額を押し付けたら、逃げたいみたいに身を竦められた。
 こんなとき、英士や結人のほうがこいつは安心するかもしれない、と。
 自分の思いを否定することを考えた。









************************
 コメントに悩む3タイトルめ4話。とりあえず目下すれ違い中。
 ああ肩凝った。

 このシリーズ、今回の話のプロットの日付は2003年12月18日と書いてありました。…一年もだらだら考え続けてやっと文章に? …みたいな(こういうのを愚図っていうんですね!)
 展開が進むにつれて、小ネタなのに書き直しの回数も増えました。これ木曜日から書いてました。んで書いては消し、書いては修正したり入れ替えたりぐだぐだうだうだ。
 んで結局プロットと違ってるんだから世話ないよね。ケッ(やさぐれ)。
 もうどんな展開だろうが最終地点が同じならルートは選ぶだけ無駄だ! を合言葉に(長いよ)適度に進めたいと思います。
 いいよ、変なとこは正規に移動するとき直すよ…。
 日記で大切なのは勢いです。

 ところで、最近パソコンかワープロとつけるときには必ずガンダムシードのビデオを見ているのですが。あ、デス種のほうではなくて純粋に種です。
 アスランが、やたらめったら可哀相で愛しいです。
 何気に飛ばし飛ばしでしか見ていなかったので、中盤付近をスコンと見ていなかったのですが、改めて見返すとアスランが喋ってるときが一番楽しいことに気付きました。キラよりは男前ですね!
 思い返せば当初、私はキラ×カガリを狙っていたにも関わらず、途中でカップリングを成立させるにはあまりにも倫理に反する設定が登場してしまい、泣く泣く諦めた過去があったのですが。
 いいよ、もう、アスカガで。
 でも一番譲れないのはムウマリュでございましてよ!(えばる理由はない)(そしてまた最後で泣く)
 ついでに最近友人のKザキさんと一番揉めた会話はキラアスかアスキラか、でした。
 男には強いが女には弱いアスラン説を推す私は後者です。キラには強いがカガリには弱い。
 私的アスラン名台詞は、ラクス合流後のカガリから婚約者を云々を言われ、元だと訂正した後の「俺は…馬鹿だから…」です。今更ですが、最近初めて音声で聞いたのです。
 一人で見ていた分、臆面なく笑わせて頂きましてよアスラン・ザラ!
 俺は馬鹿だから。そんな石田ボイスのしっとり声で言われたら照れ通り越してすごい笑ってしまいましたわ。
 そして何気なくやたらアスランの服を掴みたがるカガリさんが可愛い。これでもかと服を掴むカガリの手をクローズアップしたがるサンライズに敬礼。よーしこのまま最後まで!(決定)
 人様より遅れること二年、本格的な種ブーム到来です。

 あ、今日のデス種も見ました。わざわざビデオのタイマー使ったの何年振りでしょうか。
 そういや一部地域によって放映が遅れるのは、放映権利の問題だと思うんですけど実際はどうなんでしょう。製作は毎日テレビで本社が大阪あたりだったと思うので、そのへんと系列のキー局であるTBSの東京方面は早い(後の地域がどこまでだかは知りませんが)、という認識があるんですけど…。
 調べたらあっさりわかりそうなのですが、いかんせんめんどくさい。とりあえずこれがある限り、デス種感想は隠せという意識が私に残ってればいいや。
 で、今日の感想?
 公式サイトの人物紹介だけじゃ人と名前が一致せんよ。
 またなんか強い女子ばかりいたよ。
 シンくんが色違いキラにしか見えないよ。
 以上。
 最初の数話ほとんど見てない分、もうちょっと復習してきますー。

 ところで私の中のJリーグ代表、湘南ベルマーレは今期11位で終わりそうな不安が切ないです。去年は10位でした。
 弱くても好きだからいいなんて私は思いません。これから這い上がって目にもの見せてやって私が周囲に「それごらんおほほほほ」と高笑いしたいんだ! 来年の前に今だ今! 順位向上に最後まで諦めずいて欲しい。




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