小ネタ日記ex

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六時間前の夜明け(笛/真田一馬)(未来)。
2004年08月19日(木)

 ジャパンブルーの夏。








 いつの頃か、気づけば決まっていた約束事がある。
 家を離れて戦う日、勝った日は夜に一通のメール。負けたときは、何も連絡を入れずに帰る。それが、真田一馬と同居人の間の小さな連絡の入れ方だった。
 だから、きっと今ごろすごく驚いてるに違いない。
 湿度の低い異国の部屋で、真田は携帯電話を片手に薄い笑みを浮かべた。

「そっち、真夜中だよな」

 短い挨拶のあと、驚いた様子の電話の向こうを半ば無視して真田は言った。日本にいる彼女は少し考えるように、いいえと言った。

『いま夜明けです。すごいですよ、外』
「なにが」
『空一面が、すごく綺麗です。西のほうは暗いのに、東はもう太陽が昇りかけてます』

 たった十日前後顔を見ていないだけだというのに、彼女の声は真田に故郷の国と生活を溢れるような懐かしさを伴って思い起こさせる。

「へえ」
『そっちのお天気はどうですか?』
「今部屋だけど、夕焼け見たからたぶん明日も晴れ」
『そうですか。あ、やっぱりそっちのご飯ってギリシャ料理ですか?』
「全部じゃねーよ。試合前とかは、日本から一緒にコックが来てるから、普通に日本食だったりするし」
『さすがですね』

 彼女の声に素直な感嘆の声音が混じる。近年の日本サッカー協会は選手の健康維持にも並々ならぬ努力をしてくれていることを真田が話すと、彼女はさらに素直な感心の言葉を漏らした。
 真田が持っている海外通話可能という煽り文句の携帯電話の使い勝手はすこぶる良かった。タイムラグもなければ雑音もない。同室者のいない今は、何でも好きに話せた。

「でも、勝てなかった」

 他愛ない会話を続けていくうちに、どうしても真田の脳裏から離れなかった今日の現実が口をついて出た。彼女が気遣ってこの世界最大のスポーツの祭典の競技種目については口にしなかったというのに、真田のほうからその気持ちを突っぱねた。

『…今日は勝ったじゃないですか』

 数ヶ月前、奇妙な縁で同居するようになった年下の子は、ひどく静かで優しい声だった。
 真田は小さく笑う。自分への嘲笑だったかもしれない。

「単なる消化試合だろ」

 期待されていたオリンピックのメダルを、持ち帰ることはかなわなかった。
 23歳以下が基本で構成されるオリンピックサッカー日本代表選手。世界最高のスポーツ競技大会を目指すIOCは年齢規定を外す意向が強かったが、それではサッカーのワールドカップを四年に一度開催する意味がなくなると強固に反対したFIFAとの、それぞれが折り合いをつけて3人枠のみ年齢制限をつけずに登録出来るようになったのは長い五輪の歴史の中ではまだ新しい時代のことだ。
 大抵の選手はまず五輪には一度しか出れない。真田にとっては、生涯最初で最後の五輪出場だった。
 公私に渡って期待を寄せられていたのを知っていた。応えるつもりで、日本を離れ空を飛んでこの海沿いの国へ来た。
 オリンピックにおける男子サッカー競技は、日本のオリンピック予算の中で少なからぬ割合を占めている。日本がサッカーワールドカップ進出を決めて以来国内のサッカー人気は着実に増えている中、日本サッカー協会の尽力とスポンサーの助力もあるとはいえ、五輪における男子サッカーの経費予算はそのメダル獲得への期待と同規模に膨れ上がっていた。

『勝ちは、勝ちです』

 敗戦直後の真田とは全くといっていいほど顔を合わせたことがないはずの彼女は、落ち着いていた。遠い日本の笑みが見えるようで、真田はベッドに腰掛けたままうなだれる。
 消化試合で勝ったところで、決勝トーナメントに進めない以上意味はない。そんな気持ちが首をもたげて、消えてくれない。

『真田さんは勝ったんです。ちゃんと点入れたじゃないですか。わたし、ちゃんと見てましたよ』

 彼女は絶対に真田を非難する言葉は言わない。それを知っていて、時差のある日本に電話したのかもしれないと、真田は言葉に詰まりながら思った。
 あの部屋で、いま留守番をしている年下の子は、何を思って真田の試合を見ていたのだろう。

『プレッシャーとか、慣れない場所でとか、大変でしたよね』
「別に…」

 一人きりの部屋は空調の音がやけに騒がしい。日本より乾いた場所なのであのうだるような暑さは夜になれば失せるが、日中の暑さは変わらない。
 それでも十日を過ぎれば、あの日本の暑さが懐かしい。

『真田さん、かっこよかったですよ』

 負け試合であっても、彼女はそう言うのだろう。
 嘘のない響きに、少し泣きたくなった。
 彼女がキッチンの端で育てている、水栽培の人参のヘタはまだ青々と葉を茂らせているだろうか。気を紛らわせようと、真田はそんな風景を思い出す。
 けれど心は正直に、この地での三度の戦いの情報を頭に厳しく流し込む。
 常にリードされたまま追いかけた一戦めと二戦め。広がった点差を縮めたと思えばさらに広げられ、点を決めきれない自分に苛立った。
 三戦めは何としても勝って帰ろうと、関わったすべての人間同士で決めた。このままで終われない。ただそう思った。
 そして勝った。けれど、決勝トーナメントには進めずメダルは泡沫の夢と消えた。

「…メダル、見せるって俺言ったのにな」

 日本を発つ前に、彼女にそう約束した。あの決意は、決して冗談ではなかったのに。
 苦さを感じて真田が顔をゆがめると、電話の向こうで彼女がかぶりを振る気配がした。

『いいんです。もう、充分です。あんなに感動させてくれて、ありがとうございます』

 ゆっくり休んで、また、頑張って下さい。
 軽く目を伏せた真田の脳裏に、明けゆく空の色を窓いっぱいに差し込んだ自分の家が浮かぶ。そのテレビの前、キッチンからすぐ続く部屋、小さな丸い椅子に座って微笑む年下の子、近くでもう一匹の同居者が眠っている。
 真田さん、と女性だけが持つ優しい声で彼女は言う。

『夜、明けましたよ』
「…ああ」

 ほんのわずか、息を飲み込む空気が伝わった。
 涙ではなく笑顔で伝えようと必死で努力する刹那の間。


『お誕生日、おめでとうございます』


 同じ場所では迎えられなかった誕生日。
 数々の思いを抱え、真田は本当に泣きたくなった。ただし、悲しいわけではない。


「ありがとう」


 最後まで信じてくれて。
 たった一つの勝利を、一番大事にしてくれて。
 一生懸命慰めようとしてくれて。

 色々言いたいことはある。この国での話したい思い出もある。けれどそれを言う前に、必ず、帰ったら笑ってただいまを言おう。そう思った。





 お誕生日おめでとうございます。








************************
 フライングです。
 真田くんの誕生日は20日です。明日なんです。
 でも、ここはやっぱりどうせならアテネ五輪サッカー代表の試合にひっかけて…!! と思ったがゆえです。ごめんなさい真田くん。

 ついでに真田くんは今年で二十歳のため、アテネ代表になるのも当然二十歳なわけで、このシリーズ設定の二十一歳とは年齢に誤差があります。
 え、だってシリーズ書き始めたとき、五輪代表なんて何も考えてなかったし(本音)。
 すみません。フィクションの世界のことなので、サラっと流して下さいまし。
 真田シリーズはまだメモライズが残っていまして、前のほうはこちらです。

 で、アテネ五輪サッカー代表。終わりましたね。
 山本監督、本当にお疲れ様でした。
 黒河以外は全員ピッチに立ったという結果なのですが、その黒河だけが残った、という現実にちょっとかわいそうになりました。GKだから仕方ない部分もあるのでしょうが。平山だってちょっと出たのに…。
 全速全力で突っ走る大久保に個人的に拍手。面白かった。
 メダル成らずとも次に繋げるための戦い。未来を見据え続ける山本昌邦氏を、この先も応援したいと思います。

 これで私のアテネにおける見所はあと閉会式だけか、という感じなのですがまだなでしこさんたちがいました。何気なく同県同市出身の選手がいるので、というか従兄弟の同級生だったというので、やたら身内で応援中です。

 そういえは昨日蜂に刺されました。
 痛かったです。人生で二度めです。おのれアシナガ野郎め…!!

 昨日はですね、以前飼っていた猫の命日なので妹と一緒に敷地の端っこにある我が家の墓地に行っていたのです。
 で、そこは一年中何らかの花が咲くように色々植えてあるせいなのか、巣にしやすい石灯籠がいくつもあるせいなのか、昔から蜂が多いところで。
 でもお盆があったばかりなので、お祖父さんが掃除ついでに蜂の巣も駆除したはずさ、と何も考えず行って、何もしてないのに刺されました。
 蜂に刺された、と言うと巣に近づいたんじゃないかとか蜂を怒らせたんじゃないかとか言われますが、誓って私は何もしていない。猫の墓にお花を供えてさあお線香をつけましょ、というところでブスっと。
 そして刺されたのは右腕の付け根に近いところの、内側。すごく肉がやわらかい部分。
 七分丈のカーディガンの上から。
 しかも蜂が寄ってくるという黄色でも黒でもなく、ピンクのカーディガンの上から刺された。
 あんまりだと思う。

 咄嗟に叫んだら(痛くて)妹にまず水を掛けられ、荷物まとめてさっさと退去。家に帰らずにお祖母さんちに寄って、手当てしてもらいました。
 痛かったよ(半泣きになるぐらいは)。
 肌が露出してるのは顔・首・手首、ぐらいだったというのになぜ服の上から刺すのか蜂。
 私に何の恨みがあるというのか蜂。ただそこにいただけじゃないか。
 一日経ったいま、腕の付け根あたりはいかにも毒素が広がりました的な薄紫になってます。さわるとちょっと痛い。

 まだレジャーの時期です。蜂がいそうな場所に行く方、お気をつけて。
 今の私はお池の周りに野ばらが咲いた歌にすら八つ当たりしたい気分です。痛かったんだ。

 ところで横浜が負けてた(高校野球)。
 生中継は次から見よう、と思っていたらもう終わったとな。何だと?
 なぁんか近年の神奈川勢は悪くはないけどイマイチ、という気がします。松坂を生んだあの時代を思い出せ神奈川。サッカーなら横浜Fマリ、高校野球は横浜一円、強豪と決まっておろう!(プロ野球はナチュラルにスルー)
 そしていいかげん神奈川に二校め枠を作れ高野連。
 東京と神奈川で高校数にそんな差はないのです。なのに東京は二校、神奈川は一校。へえああそうそんなに東京都っていうのは偉いのか、と毎度毎度のことながら、思います。半端に接しているものだからなまじ憎らしい。
 神奈川県の永遠のライバルは東京都。たとえ東京が気に留めてなくとも(三上を眼中外とみなした郭のように)(一方的な敵愾心)。




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