余計な一言
昼前まで熟睡。
大急ぎで支度をして、息子は試合会場の確認。
駅前に来た後輩たちと合流した。
数年ぶりに見ると、みんな顔が変っていて
面影を探すのに一苦労。

途中寄ったコンビニでチームに差し入れを買った。
棚にあったアクエリアスを、ごっそり全部カゴに
入れた息子の豪快さに笑ってしまう。

子供たちと言えないほど、みんな外見は立派だ。
高校生だからなんだけど。
久しぶりに見る各チームのユニフォーム。
試合には勝ったけど、内容的には疑問。
昔、試合後に親同士で文句を言うと、息子は怒り出した。
だから黙っていたけれど、今回は、どう思った?と
聞いてくれた。
これも初めてのことで、嬉しかった。
思ったままを言うと、息子も同感だったらしい。
すごく楽しみにしていたのにと怒っていた。

 試合を観ていると、したくなるでしょう?

 うん。でも、もう20分も走れないだろな。


部屋に戻り、夕食を作った。
帰ってすぐに、黙ったままお米を研ぎだしたのに
驚いた。
上手に研げないと、研ぎ方を聞いてくるのにも
驚いた。
私の冷蔵庫より、たっぷりと入っている。
適当に材料を出して、オムレツ、お味噌汁、サラダ。
息子がオムレツを返してくれた。
フライパンの扱いは、私よりずっと上手だった。
嬉しいような、悲しいような。

冷蔵庫の中の食材を見ながら、どうやって何を
作るかを素直に尋ねてくれた。
ぎっしり入った冷蔵庫の前で、思わず
一緒に暮らしたいと言ってしまい、その瞬間
息子の顔は強張った。
どうしてできもしないことを、言ってしまったんだろう
ごめんねが出なかった。
余計なことを言ってごめんね、と言えなかった。

幼い頃、包丁を持たせて、
 これからは、男だって作れないとダメ。
そういって台所に立たせたことを思い出した。
あの頃は、全く言うことを聞かなかったけれど。

最寄り駅まで車で送ってもらった。
車を降りる直前
 元気でな
と、先に言われてしまった。
私は、ありがとうと言い
新幹線に乗ってからも、メールを送った。

息子から返事は来なかった。
彼の寂しげで悲しげな顔が浮かんで
私も、それ以上、送れなくなった。

2005年05月09日(月)

初日 最新

Copyright(C)2004- you All Right Reserved.