幽玄に沈む庭
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2003年08月08日(金)
灰色の瞳


ポタポタ・・・ポタ。

腕から滲み出た液体が床に落ちる音がする。


月の光の中に腕を差し出して

蒼く照らされた腕に出でる紅を見る。


其れは赤と言うよりはむしろ黒く

この世界を浸していた。






止まっていた思考のエンジンが廻り出す。

其れと共に痛みも意識に伝わってくる。


鋭い痛みに顔を顰めながらも

心は満たされていた


カッターを持っていた方の腕を伸ばして

ティッシュを何枚か引き出して紅の淵に当てようとした時・・・



蒼の世界に蔭が差した

咄嗟に窓を見上げる



其処には・・・



「其れ、欲しいな♪」



囀るような声

透き通り、冷涼なソプラノ


窓枠に黒い影がちょこんと座っていた

顔は、逆光でよく分からない

唖然としてしまい、咄嗟には何も出来ない


そんな様子にはお構い無しに

「影」は床へと降り立って

差し向かいに座り込み

じっと顔を覗きこんで来る


「ね?君にはイラナイモノでしょ?」

と言うと紅の散るこの腕を一瞥して


向き直ってくる。

・・・・・・灰色の瞳が全ての動きを封じた












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