冬晴れかと思いきや山里では時おり小雪が舞っていた。
気温はさほど低くはなかったが北西の冷たい風が強く吹く。
明日にかけて平野部でも雪とのこと。まさかと思いつつ
窓を開ければみぞれ混じりの雪が降っていて驚いている。
積もる心配は無さそうだが明日の朝はどんな景色が見られるのだろう。
工場は怒涛の忙しさであったが義父はまた高知市へ出張する。
大切な会議があるとのことスーツ姿で出掛けて行った。
首と右腕の痛みはまだ続いており痛み止めを服用させたかったのだが
運転中に眠気があるやも知れず用心してひたすら我慢することになった。
元気そうに見えてもどんなにか辛いことだろう。
義父の我慢強さには頭が下がる思いであった。
同僚はまた大型車と格闘しており一向に捗る様子がない。
そうして仕事は停滞して行くのだが後から後から車検の予約が入る。
スケジュールが順調には組めず頭を悩ますばかりであった。
今日は一般修理の依頼もあったが仕方なくディーラーに頼むことにする。
仕事のあるのは有難いことだが今の現状ではとても手に負えなかった。
事務仕事は一段落しており少し早めに2時半に退社する。
4時前には帰宅出来そうで炬燵が恋しくてならない。
炬燵で仕事が出来ればどんなにか良いだろうかと馬鹿なことを考える。
大相撲ロスの夫は退屈を持て余しているようだった。
時代劇は「破れ新九郎」で何と47年前の古いドラマである。
主役は芦屋錦之助で「破れ奉行」と同じであった。
おそらく当時は「破れシリーズ」として放送されていたのだろう。
最後に悪者が成敗されるのはどれも同じで何とも豪快である。
大相撲もそうだったが夫と一緒にテレビを見るのが好きだった。
日頃から部屋に閉じ籠って書き物ばかりしている私である。
なんだか罪滅ぼしをしているような気分にもなった。
夫婦共通の時間はとても貴重に思えてならない。
思い起こせば「書く」ことでどれほど夫を拒絶して来たことだろう。
まだパソコンの無い時代にはノートに書き押し入れに隠していた。
それを偶然見つけた夫は激怒しノートを引き千切ったのだった。
その時「何を書いても良いが金になるもんを書け」と言い放った。
夫とは価値観が全く違い「書く」と云う行為が理解できなかったのだろう。
その出来事は私を苦しめ一生忘れられない言葉となったが
夫も歳を重ねずいぶんと丸くなり穏やかな老人となった。
けれども新聞の文芸欄などは決して見ることはない。
その方が気楽だった。私はおかげで好きなように書いていられる。
雪がまたみぞれに変わったようだ。気温は7℃さほど冷え込んではいない。
まだ8時過ぎだがそろそろ夫が寝床に入る時間であった。
夜中に代わる代わるトイレに行くのが習いであるが
つい夫の寝顔を見るのが癖になっている。
寝息を確かめるとほっとして私もまたぐっすりと眠れるのだった。
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