山里では時雨が降りまるで氷雨のように冷たかった。
一時間程で止み青空が見え始めたが暖かさもつかの間の事である。
晴れたり曇ったりで陽が翳ると一気に肌寒くなった。
義父は農作業に行きたかったのだろう。そわそわと落ち着かない。
田んぼの草を焼く予定だったようだ。雨で濡れたと空に文句を言う。
同僚は資格試験の受験のため高知市へ向かう。
「忘れ物はないかね」と子供に云うように送り出した。
簡単な試験らしいが不合格の人も居ると聞き気が気ではない。
還暦を過ぎてからの試験など出来る事なら避けたいものである。
午後、新車の納車があった。お客さんは首を長くして待っている。
先週の予定だったのが大幅に遅れてしまったのだ。
それでもお客さんは気を損ねることなく気長に待ってくれ有難いこと。
代金は即金で義父が分厚い封筒を提げて上機嫌で帰って来る。
滅多に手にすることのない札束であった。私も嬉しくてならない。
けれどもメーカーに支払うと儲けは僅かである。
せめて一割あればとつい欲張ってしまうのだ。
事務仕事が一段落していたので少しずつ年賀状を書き始める。
宛名だけなら早いのだが一筆添えるのが大変であった。
けれども手を抜く訳にはいかない。一筆が真心だと思う。
印刷のみの年賀状ほど味気ないものはない。
3時に退社。お昼休憩が無かったので少し疲れていたようだ。
高速運転をしている最中に眠気が襲って来て焦りまくる。
窓を開けて冷たい風を浴びながらやっとの思いで帰り着く。
サニーマートのお総菜売り場はもううんざりである。
とにかく手作りをと思いあれこれと食材を買った。
セルフレジで精算をしていたら義父から着信があり
取引先の中古部品店へ行かなければいけなくなった。
まだ家へは帰れない。もうひと踏ん張りだと車を飛ばす。
息子の職場のすぐ傍である。もう何ヶ月も顔を見ていない。
やっと帰宅したらもう4時半になっていた。
平野部では時雨が無かったそうで洗濯物はよく乾いておりほっとする。
夫が「三匹が斬る」を見ていたので一緒に見ながら洗濯物を畳んだ。
今日も沢山の悪者が成敗された。殺しても罪にはならないのだそうだ。
「どうして?」と夫に訊けば「ドラマじゃけんよ」と笑い飛ばす。
悪者の家来にも家族が居るだろうにと思うのは私だけのようだ。
いつもは見えている一番星が見えなかった。
なんだかぽっかりとこころに穴が開いたような気がする。
埋めるためには書くしかないと今夜もゆらゆらとこれを記した。
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