朝風の涼しさもつかの間のこと。日中は今日も厳しい残暑となる。
江川崎は今日も全国一の暑さであったが午後には愛知県豊田市に抜かれた。
わずか0.9℃の差である。お日様の頑張りが足らなかったのだろう。
どうせ暑くなるのならとことん上を目指して欲しいと馬鹿なことを思う。
山里は平野部よりも少し気温が低く35℃程であった。
風があり木陰に立つと思いがけない涼風が吹き抜ける。
確実に秋が近づいているのを感じほっと空を仰いだ。
明日から15日までお盆休みとなるため今日は仕事だった。
預かっている車の整備を済ませ納車しなければならない。
ボーナスの支給は出来ないが寸志の「お盆玉」の準備をする。
昔はお盆と年末は掻き入れ時であったが今は無縁となった。
現金収入は殆ど無く預金を崩すしか手段はない。
その預金も底を尽きかけていたが思い切って引き出した。
後は野となれ山となれである。きっとなんとかなるだろう。
「お盆玉」を一番喜んでくれたのは義父であった。
なんとも嬉しそうに受け取ってくれて満面の笑顔になる。
これまで毎月の役員報酬もまともに支払えずにいたのだった。
そうして経営難を乗り越えて来た。我ながらよくやったと思う。
朝のうちに母の初盆の準備をした。
事務所に山積みになっていたお供え物も運び入れる。
胡瓜で馬を作り茄子で牛を作った。
母の好きだった葡萄。林檎や梨、ビールとコーヒーも供える。
仕事中だった義父も様子を見に来て「おお完璧や」と言ってくれた。
これまで義父に任せっきりだったがやっと娘らしいことが出来た。
13日には迎え火を焚かねばならずそれだけは義父に託す。
母はきっと胡瓜の馬に乗って大急ぎで帰って来てくれるだろう。
とにかくやれるだけのことをやったのだ。母も赦してくれるに違いない。
いつまでも薄情な娘ではいられない私はそればかりを思っている。
魂のありかを知りたい。母はいったい何処から帰って来るのだろう。
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