ゆらゆら日記
風に吹かれてゆらゆらと気の向くままに生きていきたいもんです。

2024年04月12日(金) 全力で守りたい

春らしい穏やかな晴天。風もなく汗ばむほどだった。

山里ではあちらこちらで田植えの光景が見られる。

今は機械であっという間に植えてしまうけれど

昔はどんなにか大変だったことだろう。

私は経験したことがないが母が子供の頃には手伝ったらしい。

子供が家の仕事を手伝うのが当たり前だった時代である。

母が中学を卒業した時に高校へ進学したいと祖父に願い出たら

「百姓の子に学問は要らん」と酷く叱れたと聞いたことがある。

もし母の願いが聞き入れられていたら私はこの世に存在しなかっただろう。

運命なのか宿命なのか母は18歳の若さで私を産んだのだった。


私ももしあの時にああしていればこうしていればとよく思うが

違う道を歩んでいたら今の暮らしも家族にも出会えなかったことになる。

そう思うと人の一生は生まれた時から定められているのかもしれない。

すべてのことが縁だと云っても過言ではないだろう。





義父が田起こしに行ったきり帰って来ない日が続いていた。

田植えが遅れていることにいささか焦りを感じているようである。

工場の仕事も忙しかったが義父なりの優先順位があり

周りがあれこれと口を挟むと大変なことになってしまう。

とにかく義父の思い通りにさせてあげなくてはいけなかった。


今日はもう金曜日。仕上げなくてはいけない車検が4台もあり

来週まで延ばすことはどうしても出来なかった。

義父もそのことは承知していたのでひたすら帰りを待つ。

お昼になっても帰らない。2時になりやっと帰って来てくれた。

昼食も食べないで直ぐに検査に取り掛かってくれてほっと安堵する。

検査が終れば車検適合の書類を書かねばならず私も忙しかった。

目まぐるしいとはこんな時を云うのだろう。トイレにも行けない。


やっと書類を書き終えたらもう4時になっていた。

義父は「よっし、もうええな」と言ってまた一目散に田んぼに向かう。

とうとう昼食を食べる暇もなかった。どんなにか空腹だったことだろう。

義父に比べれば私の疲れなど本当に些細なことである。


後始末をして大急ぎで帰路に着いたが買物をしなければならない。

さすがに二日続けて手を抜くわけにはいかなかった。

サニーマートへ着いたらお刺身が半額になっており嬉しくてならない。

後はお惣菜の鶏のから揚げを買いスンドゥブの素を買った。

絹ごし豆腐とアサリ、ウィンナーを入れて煮込めば直ぐに食べられる。


帰宅したら庭でめいちゃんとお友達が水遊びをしていた。

昼間なら兎も角もう5時を過ぎていて風邪を引きそうである。

二人とも全身びしょ濡れなのでなんともはらはらした。

娘がお風呂の準備をしており直ぐに入ってくれたのでほっとする。

元気なのは嬉しいことだがさすがにまだ水遊びは早いだろう。


夕食時めいちゃんがしきりに学校の話をしていて気になった。

月曜日の朝礼で何かの発表をするのだそうだ。

それはそれで頼もしく喜ばしいことではあったが

あやちゃんが俯いたきりしゅんとしていて気遣わずにいられない。

「ごちそうさま」と小さな声で呟くと逃げるように二階に上がったのだ。

娘夫婦は気づかなかったのだろうか。あやちゃんは葛藤をしている。

それは今に始まったことではないが心境を察するばかりであった。


けれどもそれも試練なのだろう。そう思い直すことにする。

腫れ物に触るような日々であってはならない。

もう以前のような硝子細工ではないのだ。

少々のことでは傷つかない。あやちゃんは少しずつ逞しくなっている。


けれどももし石を投げるような人がいれば私は全力で守りたい。

家族みんながそう思っているのに違いないのだ。











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