2022年07月29日(金) |
猿ものは追わないけれど懐かしき |
台風の影響だろうか大気が不安定だったようだ。
雨が降ったり止んだりで午後には風が強くなる。
幸い直撃は無さそうだけれど明日は大雨になるかもしれない。
今朝は山道に差し掛かる前にお遍路さんに声を掛けることが出来た。
立ち止まって地図を広げていたので気になってしまったのだ。
「道は分かりますか?」と訊いたら「はい、大丈夫です」と。
一瞬お節介だったかなと思ったけれど笑顔に救われたような気がした。
「お気をつけて」と声を掛けたら「ありがとうございます」の声。
ささやかなことだけれどとても清々しい気持ちになった。
躊躇ってはいけないのだなと思う。これからも進んで声を掛けよう。
夕方のニュースで民家に野生の猿が侵入し住民に危害を加えたらしい。
ちょうど孫たちも見ていて思わず「おばあちゃんも噛まれた」と。
決して自慢することではないけれどつい自慢げな口調になる。
小学生の頃、学校で何故か猿を飼っていたのだった。
校庭の隅に檻があり猿の名は「花子」と言った。
その花子よほど賢かったのだろう度々檻の鍵を外し脱走するのだった。
「生徒はみな教室に入りなさい、外に出てはいけません」
あれは校長先生の声だったのだろうか、記憶は定かではないけれど
用務員をしていた母の声ではなかったようだ。
昼休みのことで私は校庭で遊んでいたのだけれど
逃げようとはせず花子に襲われてしまったのだった。
左足を噛まれもの凄い痛みで血がいっぱい出た。
けれども不思議と恐怖心が湧いて来なかったのだ。
もしかしたら花子に親近感を抱いていたのかもしれない。
いつも檻の中に居る花子は愛嬌がありとても可愛らしかった。
友達はみな逃げて教室に駆け込んでいたのだけれど
私は逃げなかった。その時の心境は今もってよく分からない。
花子と遊ぼうと思っていたのかまるで仲間のように思っていたのか。
そうして私は再び噛まれた。そうなればもはや名誉の負傷である。
学校でも前代未聞のことだったようで「二度も噛まれた少女」となる。
そんなことで有名になってもどうしようもないけれど
私は何故か誇らしかった。花子に噛まれた傷跡を見せびらかしたりする。
小学四年生になる前に父の転勤で転校することになった。
その頃にはもう花子は何処にも居なかった。
いつの間にか姿を消していたように記憶している。
元々野生の猿だったのかもしれない。山に放されたのだろうか。
傷跡は65歳になった今もはっきりと残っている。
花子との思い出と言っても良いだろう。懐かしい痛みであった。
猿の寿命には詳しくはないけれど
もし人間と同じならば80歳位ではないだろうか。
子もいれば孫もいるだろうひ孫もいるかもしれない。
花子は私を噛んだことを憶えているだろうか。
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