曇り日。お昼頃からぽつぽつと雨が降り始める。
気温もあまり上がらず肌寒い一日だった。
大晦日から元旦にかけてまた大寒波が襲って来るとのこと。
もう雪はたくさんだけれどまた降るのかもしれない。
予定通りに仕事納め。午前中に工場の清掃をしてお昼で終わる。
資金繰りが順調だったのでボーナスを支給することにした。
それも私の一存で決められるので我ながら大したものだと思う。
ボーナスと言ってもほんの寸志ほどの額だけれど
義父は生まれて初めて貰ったととても喜んでいた。
中学を卒業してからとある整備工場に見習いで就職し
整備士の資格を取ったけれどお給料はとても安かったらしい。
60年以上も昔の事でボーナスなどとは縁遠かったのだろう。
その後独立して自分の工場を持ったけれど
食べて行くだけで精一杯だったらしい。
会社を設立した頃には従業員のお給料に苦労し続けて
社長とは言え役員報酬さえも手に出来なかったのだった。
どんなに働いても報われない。云わば日陰の道を歩んで来たのだと思う。
そんな義父にたとえ寸志でもボーナスをあげられて本当に良かった。
「こんなにもらって良いのか」と心配していたけれど
「大丈夫よ」と笑顔で応える。「また来年も頑張ろうね」と言って。
私は心地よい達成感と充実感に満たされていた。
難破船のような会社だけれど何処かの島に流れ着いたような気がする。
ひと休みしたらまた波に押されて海を漂うことだろう。
義父と同僚と3人で一生懸命にオールを漕ぎ続けようと思う。
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