ゆらゆら日記
風に吹かれてゆらゆらと気の向くままに生きていきたいもんです。

2021年04月05日(月) 勝って来るぞと勇ましく

雨あがりの晴天。北西の風がとても爽やかに感じる。


今朝は母から電話があり「もう大丈夫よ」の声にほっと安堵した。

それをすっかり信じ込んでいただけに

お昼前の病院からの電話はまるで寝耳に水のようであった。


午前中にいくつかの検査をして詳しい病状の説明があるとのこと

今は病院内の療養施設に居るけれど病棟へ移らなければいけないと言う。

大切な話なので義父に相談したらどうしても行けそうにないと。

「私に任せてもいいの?」と訊けば「おう!」と応えるばかり。

とにかく主治医との約束の時間に遅れないよう駆けつけていた。


検査の結果を聞いて耳を疑う。心不全の数値も腎臓機能までも

大幅に数値が高く重篤状態だと言うのだった。

このまま病棟へ入院しても手の施しようがないと言われ愕然とする。

医師は県立病院への転院を勧めてくれたけれどとても迷ってしまう。

大きな病院へ入院しても快復するとは限らないのだそうだ。

いちかばちかのまるで賭けのようなこと。どうすれば良いのか。


そんな大切なことをどうして私の一存で決められるだろう。

医師からも義父に相談するように言われその返事を早急にと言われる。


義父は迷うこともなく県立病院への転院を希望した。

一縷の望みをかけてみようと。このまま何もせずに最期を待つのかと。

きっと後から悔やまれるに違いないと言うのだった。

そんな義父の言葉を聞き私もやっと心を決めることが出来た。


母は涙を流していた。その涙を指先でなぞりながら

「おとうさんの言う通りにしようね」と言うと微かに頷いていた。


慣れ親しんだ施設を後にする母の辛さが痛いほどに伝わって来る。

職員さん達が歌をうたって見送ってくれた。

「勝って来るぞと勇ましく誓って国を出たからにゃ」

そうそうきっと元気になって帰って来なくてはいけない。


救急車の若い隊員さんに「わたしは死ぬのかね?」と母が問う。

隊員さんはにこっと微笑んで「ちょっと検査に行こうね」と言ってくれた。


ちょうど西日が当たり始めた路地を「右に曲がります」と言って

救急車が遠ざかって行くのが涙でかすんで見えなくなった。











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