2021年04月04日(日) |
いのちがきらきらと輝く日 |
春の雨はこんなにも優しかったのか。
二十四節気の「清明」万物の命が清らかに輝く頃だと言う。
人にはもちろんのこと道端の雑草にも尊い命が宿っている。
夜明け前けたたましく電話が鳴り
母の容態が急変した知らせが舞い込む。
とにかくすぐに来て欲しいと。大急ぎで駆けつけていた。
母は胸の痛みを訴えながらのたうちまわっていた。
手を握ってもそれを振り払うほどの痛みだったようだ。
主治医の先生が尽くせる限りの処置をしてくれたけれど
血圧がどんどん下がり足も手も冷たくなるばかり。
隣町の救急病院へ搬送する準備をしていたけれど
もう間に合わないかもしれないと言うので大きな覚悟をする。
途中で息を引き取るよりも信頼している主治医に看取って欲しい。
母もきっとそう願っているに違いないと思ったのだった。
母はそれから一時間ほど生死の境を彷徨っていたけれど
胸の痛みが次第に薄れ声をかければ目を開け反応するようになった。
ほんとうにそれは奇跡のような生還としか言いようがない。
それからしばらくするともう何事もなかったかのように
駆けつけていた私たちに労いの言葉をかけるようになる。
それがなんと愉快なことに「もうみんな解散!」と言うのだった。
「みんなお腹が空いたでしょ。朝ごはん食べてね」とも言う。
まさか笑顔で病室を去ることになろうとは思ってもいなかった。
一歩間違えれば母の命日になっていたことだろう。
今更ながら母の生命力の強さに感動さえ覚える一日となった。
母は強し。母は負けない。今日はいのちがきらきらと輝く日。
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