ゆらゆら日記
風に吹かれてゆらゆらと気の向くままに生きていきたいもんです。

2020年08月22日(土) 情けは人の為ならず

最高気温が32℃。一気に猛暑が和らぐ。

午後から雨の予報だったけれど未だに降らずにいる。

薄っすらと茜色の空を仰ぎながらこれを記し始めた。



朝の国道で見覚えのある後ろ姿。

その歩き遍路さんはすっかり顔なじみのMさんであった。

交通量の多い国道でのことで停車が出来なかったけれど

少しスピードを落としたらMさんが気がついてくれて手を振ってくれた。

私も窓から手を振る。ほっこりと笑顔になり清々しい朝のこと。



仕事を終えて帰り道。今日は朝来た山道をゆっくりと帰る。

そうしたら山里の道でまたMさんに会えたのだった。

車を停めて道端でつかの間だったけれど語り合うことが出来た。

健脚のMさんにもこの夏の猛暑はひどく堪えたらしい。

それでもひたすら歩き続ける終わりのない旅であった。

帰る場所がないわけではない。帰らないと決めているのには

深い事情があるものと察する。触れてはいけない痛みを感じる。


聞けばまだ昼食も食べていないとのこと。もしやと思って

ほんの気持ちだけれどお布施をもらっていただく。

Mさんの手を取り包み込むようにして渡すことが出来た。


お布施は決して「あげる」のではなく「もらっていただく」もの。

欲深い人間だからこそその欲を手放すことだと学んだことがある。


涙ぐむMさんに私も胸が熱くなった。情けは人の為ならず。

今日は二回も会えたのだものきっとこれも縁だろうと思った。


その時、傍らの雀色の田んぼに大きな白鷺が飛び立つのが見えた。

「ああ鳥になりたいな」とMさんがふっとつぶやく。


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