とうとう弥生三月もお終いの日。
日々てくてくと歩いて来たつもりだけれど
気づけば駆け足で走り抜けたような三月だった。
そんなに急いでどこに行くと自分に言い聞かす。
山里に向かう朝の山道。今朝もたくさんのお遍路さん。
またひとり、またひとりと数えていると10人も。
声を掛けたいと思っていてもタイミングを逃してしまう。
会釈を繰り返しながら後ろ髪を引かれるように追い越して行く。
仕事を始めるなり弟から電話があり、母の退院の知らせ。
予定よりも長引き今回は20日ほど。
通算すると一年の三分の一を病院で過ごしていることになる。
そう思うと母がとても憐れに思えてならなかった。
このまま親不孝な娘でいるわけにはいかない。
私はとても大切なことを見失っていたのだと思う。
仕事の合間に庭に出て春の陽射しを浴びていたら
母が以前から「可愛い」と言っていた野すみれがたくさん咲いていた。
あちらこちらに咲いていたのを母が寄せ集めて植えていたのだった。
ああ真っ先に見せてあげたいとこころからそう思う。
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