朝晩の肌寒さは日に日に増しているけれど、 日中は秋のやわらかな陽射しが降り注ぎとても暖かい。
あらあらと言う間に一週間が過ぎてしまって 五日間の研修を無事に終えた息子が今朝早く帰って行った。
なんだか台風一過のような夜になってしまった。 この静けさはいったいどこからやってきたのだろうか。
私は母の役目を終え、これからはまたそっと見守る日々が続くだろう。 「またいつでも帰ってきなさいね」「おう!」と応えた息子の後ろ姿。
時を同じくしてお大師堂にひとりの青年お遍路さんが来ていた。 息子よりも少し若いけれど、なんだかもうひとり息子が出来たような気持ち。 歩き始めて22日目、一日も休まずにひたすら歩き続け四万十に辿り着いたようだ。 よほど無理をしたのだろう、足を痛めていてなんとも酷いありさまだった。 とにかく休まなくては。彼はそのままお大師堂に逗留することになった。
歩きたい。でも歩けない。どんなにか悔しい思いをしたことだろう。 なんとしても自分の足で歩いて結願したいという強い意志が感じられた。
少しでも力になりたい。そう思っても何もしてあげることが出来ない。 ただ毎日気遣うばかりではらはらとしながら見守ることしか出来なかった。
その彼がやっと明日病院へ行く決心をしてくれた。 それでもしドクターストップがかかればその時は素直に従おうと言ってくれる。
「大丈夫、お大師さんはまたすぐに呼んでくれるから」 そう言って励ますのが精一杯だった。また四万十から始めれば良いのだもの。
ここまで歩いてきた。それがどんなにか素晴らしいことなのか。 彼は決して負けたのではない。大きな勇気を持ってまたきっと歩み出せるだろう。
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