はっとしたのは桜の葉が色づき始めたこと。 他の木々よりもひと足早く冬支度を始めたのかもしれない。 それはひそやかでいてなんとも控えめな風情があるものだ。
人々はみな花を愛でるけれど、葉もこんなにうつくしい。 きづいてあげなければ可哀想ではないかとその木を仰ぎ見た。
やがて散って冬ごもり。寒い寒い冬を乗り越えてこそ咲く花がある。
早朝から二時間ほど川仕事に行っていた。 今年はどうしたことか海苔網に黒い海草が付着して頭を悩ませている。 最悪の場合、緑の芽が出ないかもしれないと言われ不安でいっぱいだった。 網に付いた黒い海草をていねいに落としていく。いたちごっこのような作業。 諦めたらお終いだぞと夫に励まされながら一縷の望みを抱くばかりだった。
負けないで、負けないでとまだ目に見えぬ種に語りかける。 どうか無事に芽が出てくれますように。すがりつくように祈っている。
どんな時も希望を失ってはいけない。わかっているけれど。 ふと気づけば物事を悪い方へばかり考えてしまう自分がいた。
いけない。いけない。それではかすかな光さえも見失ってしまう。
真っ青な空におひさまが微笑んでいた。大丈夫よって微笑んでいた。
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