山里の職場に着くなり金木犀の香りがほのかに漂ってきた。 もうそんな季節。なんだかそれはとても懐かしい匂いに感じる。
ご近所に大きな金木犀の木があったので毎年楽しみにしていた。 きっとその木だと思い込んでいたのだけれど、後から見てびっくり。 いつの間に切ってしまったのだろう。跡形もなく消えてしまっていた。
けれども確かに匂ってくる。風そのものがその花であるかのように。
やっと気がついたのは午後になってからだった。 それは職場の庭のかたすみにあった。母が植えていた金木犀の木。 去年はまだ小さくて花もわずかだったというのに 今年はずいぶんと大きくなってたくさんの花を咲かせていた。
とても思いがけないこと。こんなに近くに咲いていてくれたのだ。
気づいてあげなければいけないことがまだ他にもあるような気がして なにか大切なことを見失ってはいないかとふと考え込む時がよくある。
なんだか「青い鳥」の童話のようなこと。
遠くばかりを見て必死になってさがそうとするしあわせ。
金木犀の香りはほのかにひそやかにそっとよりそうささやかなしあわせ。
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