晴れのちくもり。夕方にはまたにわか雨が降った。 夜風がとても涼しくて窓辺でまったりとこれを記している。
今夜は我が町の花火大会がある。 毎年八月の最後の土曜日にあって夏を締めくくっている。 自分のなかの「夏」はいつもそうして終っていくように思う。 土手にあがり少し遠い空の花火を見るのが楽しみであった。
いく夏を惜しみつつそっとそれを閉じる。 もう開いてはいけないと誰かがささやいている声が聴こえる。
夕立のあと。ひとりのお遍路さんが我が家を訪ねて来てくれた。 初めて会ったのは三年前の真冬。あの日のことは一生忘れられない。 三年間家に帰るなと言われて頭を丸め、辛い修行の旅に出たのだった。 所持金はわずか。托鉢をしながら生き延びていくしか術がなかった。 「俺は乞食か・・」とある公園のトイレで一晩中泣いていたと言う。
一年で挫折。その間に最愛のお母様まで亡くされてしまった。 待っていてくれるはずだった内縁の奥様も去っていってしまったのだ。
高野山に戻りまたお寺での修行が始まったけれど、 自分の考えていた「僧」とはあまりにもかけはなれていたと言う。
何も見えない。いったい自分は何を見つけようとしているのか。
彼はまたお遍路を再開した。三年前とは決して同じではない「こころ」で。
私が忘れずにいたのと同じように彼も忘れずにいてくれて嬉しかった。
今度こそ何かが見つかる。そんな旅であってほしいと心から祈っている。
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