うだるような暑さ。稲穂がすっかり実りいちめんの黄金色になる。 山里では稲刈りの事を「秋」と呼ぶ。その秋もすぐにやってきそうだった。
暑さには弱いけれど夏そのものは決して嫌いではなかった。 夏ならではの楽しみもある。汗を流しながらすくっと前を向いているような気持ち。
散歩の時間も少し遅らせ、夕風が涼風になる頃に出掛けている。 昼間の暑さがうそのように土手を吹き抜ける風がなんとも心地よい。 あんずもすっかり元気になったけれど、行きはよいよい帰りはこわい。 帰り道ではちょっとくたばってしまってやっとこさで家に辿り着く。 それでも「歩く」ということ。私もあんずから元気をもらっている。
お大師堂では顔なじみのお遍路さんMさんと再会した。 前回会ってから40日くらいだろうか。Mさんの健脚には頭が下がる。 真っ黒に日焼けした顔、そうして変わらぬ笑顔に感動さえおぼえる。 今回はしんみりとした話は抜きにしてまたの再会を約束して別れた。 次に会う頃には秋風が吹き始めているだろう。Mさんの旅は季節そのもの。
お大師ノートの一件があり、返却を願う張り紙をしてきた。 こころあるひとならきっと返してくれるだろうと信じたい気持ちでいっぱいである。 その反面、お参りに来ている人の中にはお遍路さんが泊まる事を快く思っていない人もいるらしい。 いろんな考えの人がいて当たり前だけれど、私にとってはとても嘆かわしく悲しい現実だった。
どうかそんな現実をお遍路さんが目の当たりにすることがありませんように。 疲れた身体を少しでも癒して欲しい。ほっと寛いで眠って欲しいといつも願っている。
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