やはり梅雨空がもどってきてどしゃ降りの雨になる。 地面を叩きつけるような雨。空が暴れているようだった。
そんな雨も午後には小康状態になりほっとする。 帰宅した頃には雨もやんでいていつもの散歩の時間になる。
けれどもあんずは今日もまだ元気がなくて。 犬小屋に閉じこもってぐったりと寝ていた。 薄っすらと目を開けて私の顔を見ているけれど。 それ以上の反応がない。起き上がろうとしないのだ。
もしかしたら狂犬病の注射が原因かもしれない。 動物病院に電話してみたら、そんな前例はないとのこと。 2、3日様子をみて変わらなかったら連れて来るように言われた。
やはり単なる疲れだろうか。それならばきっと元気になってくれるはずだ。 あんなに元気だったあんずが突然弱ってしまうなんてなんとも心配なこと。
晩ご飯も丸二日何も食べていなかった。お腹が空いているだろうに。 もしかしたら夜中に食べてくれるかもしれないとそっとそばに置いておく。
このまま見守るしかないぞ。夫の言葉にうなずいていた。 せめてご飯を食べてくれたら少しは元気になってくれるだろうに。
15年前の秋のこと。彼女は遠いところから我が家にやって来た。 その朝まで母犬に甘えていただろうに突然クルマに乗せられてしまって。 「姉ちゃん頼むよ」弟一家はあんずを置き去りにして帰って行ったのだった。
その夜からながいことあんずはずっと泣いていたっけ。 お母さんが恋しかったことだろう。おまけに室内ではなく庭に繋がれてしまった。
その時の彼女の寂しさ。戸惑いを思い出すと胸がいっぱいになる。
そうして我が家の一員になり末娘としての暮らしが始まったのだった。
年を重ねるということ。老いると言うことは犬にだってせつないことだと思う。
辛い、苦しい、しんどい、何ひとつ言葉を発せられない彼女。
そうか、そうか疲れたんだね。大丈夫だよきっと元気になるから。 そうやって頭を撫でてあげることしか出来ない母さんだった。
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