冬の朝らしくしんしんとした寒さ。 日中のひだまりもつかの間のことで。 夕方からまた寒くなり風がとても冷たかった。
いくら寒くても日課の散歩は欠かさない。 フードを被って背中を丸くしながら歩く。 あんずはとても元気。ぐんぐんと私を引っ張る。
お大師堂へ行くとちょうどお遍路さんが着いたところだった。 何度か会ったことのある顔見知りのお遍路さんで嬉しい再会。 なんだか自分の家へ招き入れたような気分にもなるのだった。
名も知らぬ。どこの出身なのかも聞いてはいなかったけれど。 関西弁がとても耳に心地よくてついつい話し込んでしまった。
悩みはないか。辛いことはないかと親切にきいてくれたけれど。 今の私にはすべて無縁に思える。生きているだけで幸せだった。
「足るを知るは最上の富」である。いつもこの言葉を思い出す。
もっと、もっとといったい何を願うというのだろう。
じゅうぶんではないか。これほど恵まれて満たされることはない。
「また会いましょうなあ」いつも私が先に言ってしまうのに。
今日はお遍路さんのほうが早くそう言ってくれてなんだか嬉しかった。
寒くてもほっこりとあたたかい気持ちで微笑みながら家に帰った。
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