思いがけないほどに暖かな朝。 朝陽が射し始めると青空が広がっていく。 風もないのに雲はどこに流れていくのだろう。 そうしてゆっくりといちにちが始まっていった。
いつもの峠道を行けばつわぶきの花がそれはたくさん咲いていて。 山肌からこぼれるようにその愛らしい顔をのぞかせている。
太古の昔に初めて咲いた花は黄色だったと聞く。 山や野に咲く花はまるで歴史そのもののようにも思える。
あちらこちらにとその花を見つけては「おはよう」と声をかけた。 もちろん応えてはくれない。けれどもそっと耳を澄ませてみる。
花たちは確かに語らっている。あたりの緑もささやいている。
山全体が歓喜の声をあげているように私には感じられた。
そんな峠道を鈴の音を響かせながらお遍路さんが歩いて行く。
私も歩きたいなってすごく思った。もっともっと耳を澄ましてみたい。
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