真夏らしさを感じることがあまりないまま。 とうとう立秋をむかえてしまった。
山里では今日も蜩がもの哀しくなくばかり。
せめて笑顔をと思う。陽気に笑っていたかった。 そうでなければどこかに引き摺り込まれてしまいそう。
自転車に乗って農協にいったり郵便局に行ったりする。 魚屋さんの前の道でご主人に会って少し立ち話をした。
小学生の頃この山里で三年間ほど暮らしたことがある。 その当時住んでいたのがちょうど魚屋さんの真向かいだった。
官舎だった家はもうとっくに取り壊されているけれど。 ブロック塀などはそのまま残っておりとても懐かしい。
魚屋さんのご主人は二十歳位のお兄ちゃんだったと記憶している。 ここら辺でよく遊んでいたよねと私と弟のことを話してくれた。
あそこら辺が裏庭で大きな犬を飼っていたよねとわたし。 そうそう猟犬で名前は『ユウ』だった。白くて毛がフサフサしてて。
そんな話をしていると一気に子供の頃を思い出して目頭が熱くなった。
「いっちゃん」そのご主人の事を私はそう呼ぶ。 どんなに歳月が流れてもあの頃のお兄ちゃんをそう呼んだように。
お互い長生きしようね。なんて言って笑い合いながら別れた。
そうしてまた自転車をぐいぐいこいで山里の道を走る。
風はまだまだ夏の風であってほしい。
私の夏はまだ終わらない。私の人生がまだ終わらないように。
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