午前四時。あんずが泣き始めて目が覚める。 それは甘えているようななんともせつない泣き声だった。 きゅいんきゅいんと甲高い声で泣き続ける。 ご近所迷惑にもなるだろうと夫が仕方なく散歩に連れて行った。
おしっこを我慢していたのかなと思ったけれど。 どうやらそうではなくその後もしばらく泣き続けていた。 いったいどうしたことか。言葉が通じればどんなに良いだろうか。
そんなあんずも昼間は静かにほとんど寝ている。 以前のように無駄吠えをすることもなくなりそれはとても助かっている。
午後四時。また泣き始めた。 今度は私と行く散歩をせがんでいるのだとわかる。 まだ陽射しのきつい中ふたりとぼとぼといつもの道を歩く。 汗びっしょりになった。あんずも暑いのだろうぜえぜえ言っている。 それでも満足げな表情をしていて私もほっとするのだった。
午後七時。今度は泣かなかったけれど。 夕涼みをかねてまた散歩に連れて行った。 ちょうど夕陽の沈む頃。茜色の空に川風が心地よい。
土手の石段に腰をおろしてしばらくそんな空を眺めていた。 あんずはあたりの草とたわむれている。草のことがよほど好きらしい。
明日の朝はどうか泣かないでね。そう言ってあたまを撫でてあげる。 わかったのかわからないのか。きょとんした目で見つめるばかり。
なんだかあんずに振り回されてしまったような一日だったけれど。
どうしようもなく老いていしまった我が家の末娘だった。
甘えたいのならそうさせてあげたい。
そんな愛もあってもよいのではないだろうか。
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