今夜は雨が降るのだという。 なんと久しぶりの雨だろうか。 雨音がむしょうに聴きたくなって。 待っている。からっぽの器のように。
今日はいつもの散歩道を行く。 枯れ草ばかりの土手であんずが立ち止まる。 ふと見ると雀色の野に若い緑が萌えている。 蓬の新芽だった。しきりに匂いを嗅ぐあんず。 私も屈みこんで鼻をくっつけてみたくなった。
ちいさな春を見つけたきぶん。 日に日に緑が濃くなっていくことだろう。 雑草たちの呼吸が聴こえてきそうだった。
食後。台所で後片付けをしていると。 仕事帰りの息子がひょっこりと寄ってくれた。 仕事がとても大変そう。辞めたくなったと呟く。 辞めてどうするのだと言うと家業を継ぐのだなどと。 はんぶん本気そうな事を言って父も母もびっくり。
晩ご飯食べて行きなさい。と言っても要らないと言い。 早く帰ってビールが飲みたいと風のように去って行った。
仕事がそんなに辛いのか・・と母は心配でならず。 ちょっと愚痴りに来ただけさと父は笑っている。
そうであってほしい。父も母もいつだって聞いてあげるから。 嫌なことがあったらちゃんと話して欲しい。
しんどい時はそう言って。決して無理をしないでいてね。
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