真夜中に近くで火事騒ぎがあり眠れないまま朝を迎える。 消防団の彼も出動したきり朝まで帰って来ることが出来なかった。
家が焼けて無くなる。なんとも悲惨な出来事である。 焼け出されたひとの事を思うと決して他人事ではない。
そんなこともあり午前中の仕事は休ませてもらった。 午後から市内で自動車保険の研修があり出掛けて行く。 いつもより帰宅時間が遅くなったけれど日課の散歩。
土手の上で足を引き摺るように歩いているお遍路さんと会った。 一緒にお大師堂へと向かう。お遍路さんはとても疲れている様子。 よっこらしょと荷物を下ろし被っていた笠を外してみると。 なんとびっくり。先日出会ったばかりの白髪のひとであった。
あの日。同宿のひとがあまりにも酔っ払っていたため。 無事に夜を明かせただろうかと気になっていたのだった。 案の定。その夜口論になり白髪のひとは追い出されたということ。 仕方なく大橋のたもとの東屋で朝を迎えたということだった。
私は背中をさすってもらったりしてありがたく思っていたけれど。 白髪のひとにはなんとも気の毒な出会いだったことだろうか。
もう一度ここに来たくなりましてね。そのひとはそう言ってくれた。 次の札所までずいぶんと遠回りになるというのにまた来てくれたのだ。 今夜こそひとり静かに過ごす事ができるだろう。疲れを癒してほしい。 そうしてまたきっと会いましょうねと名残惜しく別れたことだった。
縁とはまことに不思議なこと。穏やかなそのひとの笑顔が胸に沁みた。
今日は父の命日。ひとり孤独に死んでいった父のことを痛いほどに思う。
ひとがひとに巡りあうことの尊さを父がおしえてくれたようにおもった。
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