風の強いいちにち。 山里にいるとそれが南風なのか東風なのかよくわからないけれど。 9月の声を聞きその残暑をやわらげるような涼しさを感じた。
穏やかに時が過ぎていく。 先日の怒鳴り声の主も今日はとてもにこやかにしていて。 わたしの緊張感も少しずつ薄れていくのだった。
そのひとのことがずっと苦手だった。 けれどももしかしたらずっと好きだったのかもしれないと思う。
笑顔が嬉しかった。それはほんとうにほっとする笑顔だった。
どんな日もある。光もあれば影もあるように日々が流れていく。
帰宅していつもの夕暮れ散歩。日暮れが随分と早くなった。 さっさと行かなくちゃと気が急いていたのかもしれない。 例のごとくであんずとまた喧嘩をしてしまった。 お大師堂に行きたくないと駄々をこねてしょうがないのだ。
私は怒る。叱るのじゃなくて本気で怒ってしまった。 リードの先を持ってムチのようにあんずを叩いてしまった。
つぶらな瞳が悲しそうに私を見つめる。 ごめんなさいと懇願するようにその目が真っ直ぐに向かってくる。
ああ、なんてことをしたのだろう。 どうしてこんなに怒っているのだろう。
お大師堂で手を合わせながら懺悔するように頭を垂れた。
薄暗くなった土手の道を夕風に吹かれながら家路に着く。
涼しいね。気持ちいいねとあんずに声をかけていると。
ふふっとあんずが笑ったような気がした。
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