まるで梅雨の頃のような空だった。 蝉が鳴く。その声もか細くて頼りなく聴こえる。
夏の太陽はいったいどこにいってしまったのか。 雲の上にあるのよといつか母が言った言葉を思い出す。
仕事中。携帯電話が鳴った。 古くからの男友達からであったが。 なんだか出る気にならず着信音が途絶えるのをじっと待つ。
以前の私ならば懐かしさに喜んで話したことだろう。 それが今では違う。自分でもよくわからないのだけれど。 わけのわからない嫌悪感を感じてしまうのだった。
留守電にメッセージが入る。 それも聴くのが嫌になりすぐに消去してしまった。
もしかしたらお盆休みで帰省しているのかもしれない。 でも会いたいとは少しも思わなかった。
この複雑な嫌悪感はいったいなんだろう。 もう二度とかけてこなければ良いのにとさえ思う。
あれはまだ私達が30代だった頃だろうか。 中学の先輩だった彼に再会したのだった。 それはそれは懐かしかったことを記憶している。
あの頃はまだ携帯電話というものが無い時代で。 時々で良いからポケベルを鳴らしてと頼まれたのだった。
ときどき。わたしはそのトキドキが苦手なのかもしれない。 だから度々。ほぼ毎日のように鳴らしてしまったのだった。
あたりまえのことだけれどそれがモンダイになった。 私たちは決してフリンをしていたわけではなかったのだけれど。 結果的にそういうことになってしまったのだった。
平和な家庭に波風がたつ。それもおおきな波になって荒れた。
けれどもその後も私たちはそっと友達として繋がっていられた。 男だとか女だとかこれっぽっちも考えた事などなかったのだ。
そうして歳月が流れ。私たちも老いを感じる歳になる。 元気にしているか?それが口癖のように言う最初の言葉だった。
私は元気です。でもどうかそっとしておいてください。 今の彼にそう伝えることが出来たらどんなにか良いだろうか。
今の私は理解しがたい。嫌悪感を感じるなんてどうかしている。
けれどもアイタクハナイ。それを伝えるすべがなかった。
|