青空もつかのま午後から細かな雨が降り始める。 春雨というのにふさわしいやわらかな雨だった。
濡れて行こうといつもの散歩道を歩く。 例の早咲きの桜を愛でたくてならなくて。 先を急ごうとするあんずを制し立ち止まる。
しっとりと濡れた花びらはふとせつなくもあり。 なんだかなくしたものを恋しがるような想いで。 見上げた。うしなったものが私にもあるのだろうか。
この花も潔く散るだろう。はらはらと散ることだろう。
お大師堂にしばしこもり手を合わせた。 いちにちが無事に暮れようとしている。
それはなによりもありがたいことだとおもう。
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