お天気は下り坂。少しだけ陽が射したまま。 あたりが灰色に染まり始めて。雨がにおう。
ぽつりぽつりとつぶやくような雨は。 春のはじめにふる雨のように思えた。
まだまだ寒い日がめぐってくるだろうけれど。 ひと雨ごとに春の足音が近づいてくる気がする。
彼の眼科通院日のため川仕事はお休みになった。 かといって家でのんびりと寛ぐわけにもいかず。 駆けつけるようにして山里の職場へと向かった。
指折り数えてみると10日ぶり。母が喜んでくれて。 私もご機嫌よろしくたまった仕事をやっつけていく。
目まぐるしさも心地よい。ああ好きだなと思った。 次はいつになるのか未定だけれどまた頑張りたい。
何よりも母が喜んでくれるのが嬉しくてならなかった。
先日。従兄弟の葬儀のため向かった海辺の町で。 弟とふたり。かつての我が家をさがしてみたのだった。
母がパート勤めをしていた町の魚屋さんを見つける。 たしかその横の路地を奥へ入ったところ。行ってみよう! ふたりどきどきしながらその狭い路地を進んで行った。
どんなに古びていてもいい。その家の面影を胸に抱きつつ。 あの頃と同じ波の音を聴きながら。かえれない我が家を思った。
けれども。そこにははかりしれないほどの歳月が流れていた。 弟とふたり息をのむ。モウスンダコトオワッタコトなのだと知る。
母はここからながいながい旅に出たのだろう。
そうしてわたしたちもあとをおうように旅に出たのだとおもう。
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