山里では時折り小雪が舞う寒い一日だった。
今朝出勤すると机の上に紙袋が置いてあり。 中にはなんと暖かそうなレッグウォーマー。
冷え性の私にと母が買って来てくれたらしい。 さっそく履いてみる。その暖かさといったら。 なんだか嬉しくて目頭が熱くなるほどだった。
おかげで寒さも苦にならず仕事に精を出せた。 母の優しさ。ずっとずっと忘れていたように思う。 子供の頃を一気に思い出す。母はいつも優しかった。
もう40年も昔の事。寒い冬の夜に母は家を出て行った。 目が覚めた時もう母はいなくて弟とふたり途方に暮れ。 近くに住む親戚の家まで霜の降りた道を歩いて行った。 単身赴任をしていた父が駆けつけて来たのは夜だったか。 その日学校へ行ったのかさえ記憶にない。ただ母が消えた。 子供心にどんなにか不安でどんなにか傷ついたことだろう。
その日は私の誕生日でもあった。毎年まいとしその日を思い出す。 それは大人になっても変わらず。忘れてはあげられない事だった。
けれどもその大きな試練のおかげで今の私があるのだと思う。 母に再会することがなければ今の暮らしさえもなかったのだから。
いや、もっと大切なことは。母がいなければ私は命さえもなかった。 生んでくれたのだ。それが何よりもありがたいことではないだろうか。
ながいながい確執。ながいながい葛藤。もうすっかりと消えたのか。 今はまだその答えを出せない。けれども心から母に感謝する事は出来る。
やっとほんとうのおとなになれたのかもしれない。
やっとほんとうの母と娘になれたのかもしれない。
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