| 2009年06月18日(木) |
それはきっとそのためだけにそこにある。 |
今年の始め。そう毎朝のように霜がおりとても寒い季節だった。 お大師堂で出会ったお遍路さんがいた。三年間は家に帰れない。 とにかく歩き続けるしか道がない。時々は僕を思い出して下さいと。
影の姿の写真を送ってくれたのだった。時々だなんてそれはあり得ず。 あれ以来ずっと毎日その写真に手を合わせ続けていたのだけれど。
今日は仕事から帰宅するなりとても思いがけないことがあった。 姑さんが声を弾ませ「Kさんが来たよ。Kさんが来てくれたよ」と。 昼間。畑仕事をしている時に。そのお遍路さんが訪ねて来てくれたと言う。
ずっと気にかけていた。元気にしているだろうか。無事でいるだろうか。 実は近況を知らないわけではなかった。昨夜奥様と少し話したばかりだった。
お母様が急逝された事。そうして彼女がもう奥様ではなくなった事を。 とても衝撃的な事実として私はすでに受け止めていたのだと思う。
ひとにはどうしても突き放してあげなければいけない時があるのだ。 彼女の選択に私は頷く事が出来た。今だから今でなければいけない時。 それこそが試練になり。彼に乗り越える力を授けてくれるのだと思う。
夕方。お大師堂で再会が叶う。あの時と変わらない澄んだ瞳に会えた。 「今とてもきついんです」その言葉の意味を知っていながら。あえて。 深く詮索する事を避ける。ただ誰も恨んだり憎んだりしないで欲しい。 遠まわしではあったけれどそれだけは伝える事が出来た。瞳が潤んだ。
そんな彼の瞳がすべてを受けとめてくれている気がして心が救われる。 けれどもどうしてこんなことに。いったいどれほどの試練なのだと。 彼の瞳が訴えているのもわかる。人それぞれとは言え天の与える運命は。 か弱い者にも容赦なく。それゆえに過酷な試練となり得るものなのだろう。
乗り越えるために。それはきっとそのためだけにそこにある。
私は信じることだけを選ぶ。そうしてこれからも手を合わせ続けるだろう。
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