そのとき風がそっとなにかをささやいたような気がした。
耳を澄ますほどのウサギの耳をもたないわたしに。
風はなにを伝えたくてその息のありかをおしえるのだろう。
一瞬の刹那に佇むことをえらぶ。いまはまだ動き出せない。
そっと静かに月明かりを待っている。 サンダル履きでとび出して行こうか。 土手の石段を息をきらし駆け上がろうか。
誰にも見つからないように。 独りぼっちでそこに在りたい。
そうして泣きじゃくれたらどんなにいいだろう。 わけもなくくるったように肩を震わせてみたい。
欠けていることを確かめるのはもうやめにしよう。
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