いったい何日ぶりだろう。雲ひとつない晴天に恵まれる。 青空と春らしい陽射しに。こころが澄みわたるようだった。
空模様を気にすることもなく。干場いっぱいに海苔を干す。 その艶やかさがきらきら光る。ああ良い気持ち思わず声も。
漁はお休み。指折り数えてみると10日ぶりの休息日だった。 彼は春の火災予防運動のため消防団のパレードに出て行く。
私はいちにち好きなことをして過ごす。音楽三昧だったり。 午後はいつもよりずっとのんびりと。川辺の散歩道を歩く。
そうして早咲きの桜をまた見つける。四日前にも歩いた道。 その時にはまだ咲いていなかった。桜の木があることにも。 気づかずにいた。わあこんなところにと感嘆の声をあげる。
夕方。バド仲間のM君より電話がある。今は少し遠い町に住んでいて。 去年の初夏にふたりで組んで大会に出たっきり会えないままの彼だった。 健常者ではないこともあり就職に苦労していた。でも仕事が見つかって。 親元を離れて行ったのだけれど。時々ふっと近況を知らせてくれるのだ。
「優勝したよ!」今日の報せは『障害者バドミントン大会』の結果であり。 全勝のまま決勝戦まで進めたのだそうだ。なんと素晴らしい事なのだろう。 嬉しそうな声に私も嬉しくてならず。目頭が熱くなるほどの感動を覚えた。
一緒に練習していた頃はほんとうに色んな事があった。何度もぶつかって。 どれほど喧嘩をしたことだろう。私は心を鬼にするくらい彼に厳しかった。
そうして私はいっぱい泣いた。歯を食いしばりながら彼も泣いた事だろう。
優勝の賞品にバド用のスポーツバックを貰ったのだそうだ。ゆみちゃんに。 古いのをあげるのだと言う。要らなくなったら頂戴ねってそう言っていたと。 やっとゆみちゃんにあげられるようになった。でも・・でも。彼女はもういない。
一昨年の暮。ゆみちゃんが亡くなってしまったことを彼は知らなかったのだ・・。
悲しい事実をそうして知らす。今となってはもうどうしようもない事だけれど。 今年もお盆に会いに行こう。M君のことをゆみちゃんに話してあげたいと思う。
これからも勇気を出して立ち向かって行くように。そう励まして電話を切る。 転んでもすぐに起き上がる彼だもの。仕事だってバドだってきっと頑張れる。
『どんど晴れ』ちょっと昔の朝のテレビ番組だった。小岩井農場の一本桜。
私は今でもあの桜のことが忘れられない。あんなふうに咲きたいと思いながら。
きっと咲いて欲しいと願い続けるひとがいる。それがわたしの祈りでもある。
めでたし。めでたし。きょうの嬉しさを話したくてならなくてここに記しておく。
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