| 2008年10月29日(水) |
ただひとつきりの太陽に |
窓辺に居てふっと暮れなずむ空を眺めていると。その紅のすぐ間近に。 きらきらと輝く一番星を見つけた。大人心に子供心がそうして重なり。
いちにちのことなどそっと折りたたむように。夜空に託してみたくなる。
あらゆることが時間差で押しかけてきては。それは波のようだけれど。 ひとつの波に捉われず。次の波を待ちわびるくらいの心の余裕が欲しい。 だいじょうぶ海は凪いでいる。ただ裸足では冷たすぎるくらいの秋だった。
仕事を終えて買物を済ませ。川沿いの道を河口へと向かい大橋を渡ると。 どっと肩の力が抜けたように放心するのが常だった。西風のせいだろうか。 それとも遊覧船のたてる波紋だろうか。それともやはりそれは流れだろうか。
河川敷に流れ着きそこでしっかりと育った大きな木を影のように映しながら。 太陽が微笑んでいる。まるで水鏡にその姿を曝け出すことが喜びであるかのように。
わたしはあえる。たとえ決して会うことが叶わぬひとがいるのだとしても。 ただひとつきりの太陽がいてくれる。それだけでじゅうぶんだと思うのだった。
ススキの生い茂る小道を抜け路地を曲がると。『あんず』の姿が見えてくる。 目を眩しそうに細めながらお座りをして。ちょこんとそこで待っている。
ゆびきりげんまんしたのだもの。きょうもふたりでお散歩に行こうね。 それはそれは嬉しそうに尻尾を振って。私の膝に跳びついてきてくれる。
行き先はもう決めているらしく。今日もお大師堂に向けてぐんぐん歩いた。 実は昨日も行ったのだけれど。ちょうど宿泊のお遍路さんが二人来ていて。 「おいでよ」って優しく呼んでくれたと言うのに。そこで尻込みをしてしまった。
人見知りなのか臆病なのか。彼女は犬いちばい警戒心が強そうに見える。 その点わたしはけっこう人懐っこい性質なのか。少しおしゃべりをした。 備え付けのカセットコンロで晩御飯の準備をしていて。晩酌の時間ですね。 と言うと。そろそろやりましょうかねと笑顔で応えてくれたのだった。
今日はどうかなってそこに辿り着くと。し〜んと静寂の気配が漂っているばかり。 ただ水の音だけがする。川岸にひたひたとちいさな波が打ち寄せてはかえす。
あんずをお堂の石段の近くに待たせて。お大師堂にあがり正座して目を閉じた。 そうして手を合わせてお祈りをしていると。心身ともにとても清らかになれる。
どれほど祈っても私は無力であることを。すでにじゅうぶん知っているけれど。 だからこそ祈らずにいられない。そうして自分を育て続けているように思えてならない。
おなじひとつの空のした。ただひとつきりの太陽に。きょうも感謝の気持ちをこめて。
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