曇りのち。思いがけず青空にあえる。
昨日からの雨でしっとりと潤った山道を行く。 山肌からは羊歯が。まるで鳥か何かのように。 それはとても大群の姿で迫って来るのだった。
その迫力が好きだなと思う。追い詰められて。 しまいたいとさえ思う。どきどきと胸が鳴る。
ふたつ目の集落を過ぎると。道端に広がる稲田。 雀色であるはずのその田んぼに青々と萌える稲。 切り株から育った新芽が。まるで初夏のように。 そのしなやかさで伸び揺れているのが心地よい。
はっとする紅い花。もうそんな頃になったのか。 緑に寄り添う姿をはじめて見たような気がする。
死んだおばあちゃんがおしえてくれた毒のこと。 決して手折ってはいけないと真剣な目で言った。 もうすぐお彼岸だということに気づいた朝だった。
おばあちゃん会いにいくよ。今年こそ行くよって。 そうしたら。空にぽっかりと笑顔が浮かんでくる。
薄情な孫は。それでも情深くありたくて日々にあり。 授かった縁にしがみつくように生きようとしている。 愚かなのかもしれない。でもそれを失うことが怖く。 どんなにか細くなっても。それを手繰ることをする。
おばあちゃん。こんな私の生き方は間違っていますか?
重かった雲が。いつのまにか風に連れられて流れていく。
職場の庭には。紅く染まらぬ白い彼岸花がもう咲いていた。
|