| 2007年08月21日(火) |
わたしにはなにも惜しむものがない |
連日の猛暑。ひとの体温と変らぬ温度のなかにいて。 それぞれのひとのそれぞれの夏がほっと息をつく夕暮。
それはとてもほっとする。一日を惜しむように蝉が声を嗄らしているけれど。 わたしにはなにも惜しむものがない。そのことがふっとしあわせにおもえる。
暑かったろう。しんどかったろう。荷物を背負った夏遍路さんが見える。 ちょうど私の部屋の窓から。薄ぼんやりと暮れていく夕闇に映るように。
堤防の道で夕涼みをしているおじさんと何か話している。 おじさんがうなずきながら指をさしているその道の行き止まりに。 お大師堂があるのだ。どうやらお遍路さんの一夜の宿になるらしい。
夜はとても寂しい場所だ。すぐ真下の川の深い所には古い墓石が沈んでいる。 そしてそこは赤い目をしたおっきな魚が棲息している。「アカメ」という魚。
けれどもお遍路さんは。夢もみずにぐっすりと眠るだろう。せせらぎの音がする。 鈴虫の声がする。半月の月明かりに遠いひとのことを少しだけ想って眠るだろう。
そしてあしたがくる。あしたがきたらまた歩く。あしたはどこまで行くのだろう。
わたしは寂しくもない場所にいて。またいつものように酒をあおっている。 わたしというひとにはそれが似合っているように思う。抑制がほとんどない。 意思も弱い。とにかく何かに押し流されているように。どこかへ行こうとする。
けれども。わたしにもあしたがくる。わたしなりに歩くことだってできる。
わたしはどこまで行くのだろうって。時々ふっと不安になる時もあるけれど。
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