| 2007年08月14日(火) |
あした。あさって。ずっと。(完) |
これは感傷なのだろうか。もうとっくに過ぎ去ってしまった夏がここにある。 けれどもそれが遠いからといって。遠くのままに置き去りにしてはいけない。
漠然とそう思ったのだ。わたしは埋めたのだ。わたしの手でそこにわたしを。 もがきながら泣き叫んでいたように思う。その声が確かに聴こえたように思う。
わたしはわたしを生き埋めにした。それはわたし以外にはいない。 そうして走り去った。どれほど走ったのだろう。いくつもの夏が。 そこに積もった。見て見ぬふりをするのとは違うのだ。それこそが。 忘れ去るということではないだろうかと。わたしがそう決めたのだ。
だけど死んでなどいなかった。わたしはずっとそこで息をしていた・・・。
いま。わたしは打ちのめされている。わたしがわたしを打ち止まないのだ。 ひどく懲らしめられている。嘆けば嘆くほどその打つ手にちからがこもる。
逃げてしまえたらどんなにからくになるだろうと。いま思っている。 書く事が苦しい。たすけてほしい。わたしはどうすればいいのだろう。
収拾がつかなくなった。けれどなんとしても決着をつけたくてならない。 またこの手で埋めてあげればいいのだろうか。ほかにどんな手段があるだろう。
打ち続けるその手を振り払うことが出来ない。突き放すことがどうしても出来ないでいる。
その夏。それはおそらく青春となづけられる最後の夏だったのにちがいない。
思いがけずしらいし君にあった。大学の夏休みで帰郷しているのだという。 友達が路地を走って知らせに来てくれた。「はやく、待っているからはやく!」
わたしは。わたしだって走って行きたい。ほんとうに心からそう思った。
けれど思うようにはいかなかった。私はもうすでに籠のようなものの中にいて。 外から鍵をかけられているような窮屈な場所にとらわれていた。好きこのんで。 そうだった。それは自分からとび込んでしまった場所だったのだ。誰のせいでもない。
愛されるとはそういうことだと決めつけていたのかもしれない。 束縛されたかった。そうして保護されることで満たされたかったのだろうか。
懇願をする。命乞いするかのように手をあわせた。 どうしても行かなければいけない。必ず帰ってくるから「いかせて」と。
走った。飛べないのだもう。空はとてもとても遠いところにある。
しらいし君は。まぶしそうに目を細めた。そうしてふっとまぶたをとじた。 両手の指を絡めるようにしながら。その指先が微かに震えているのがわかった。 それからすぐに哀しそうな顔をしてみせた。わたしがもうわたしでないことを。 すぐに感じてしまったのだろう。「もう遅かったのかな・・」って呟くように言った。
遅かった・・ほんとうにそれは遅かったのだろう。
だから。だからどうすればいいのだろう。もう修正がきかない。 けれど。間違ってはいない。それが現実というもののカタチなのだから。
わたしはいつも与えられることだけを望んでいたように思う。 それはいつも。いつだってじぶんに同情してばかりいたからではないだろうか。
それを当然のことのように思っていたから。すこしもありがたみを感じずにいた。
思い通りにならないから。絶望して死んでしまいたいとさえ思ったのだ。
「死にたければ はやく死ね」と。 わたしを打ってくれたひとがいた。 そのひとの痛みも知らず。その恩さえにも気づかずにいて。
わたしを突き放してくれたひとがいた。 わたしを救ってくれてそして傷ついて。 けれど恨み言ひとつ言わずに。 それからもずっと見守ってくれたひとがいた。
わたしを思い出してくれたひと。 わたしに会いにきてくれたひと。
遅かったのは。あなたではない。遅かったのはわたしそのものなのだ。
ありがとうって。ありがとうを。こんなに遠い夏から伝えたくてならない。
わたしを打ってくれたひとは。二十歳で死んだ。 ある夜クルマに轢かれて死んでしまった。
まるで自ら死を選んだかのように。 泥酔したまま車道で眠っていたのだそうだ・・。
もうもどれない遠いところ。けれどもわたしは還ることが出来た。
これは感傷ではない。これは後悔でもない。これがわたしの記憶なのだ。
あした。あさって。ずっと。
永遠とは。わたしの魂の記憶になり。どれほどの時も越え続けるだろう。
またあえる。きっとあえるひとたちが。
そこでわたしを待っていてくれる気がする。
・・・完・・・
最後まで読んでくださって。ほんとうにありがとうございました。 行き詰ってしまい。もうこれ以上書けないと悶々とするばかりでした。
書かせてくれて。ほんとうにありがとうございます。
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