| 2007年07月16日(月) |
あした。あさって。ずっと。(5) |
たとえばシャボン玉のように。かすかな息で生まれることができる。 そうしてそれは空に向かって。ほんの少しの旅をすることもできる。
ほんとうにつかのまのことだ。辿り着けもせず留まりもせず宙に頼りながら。 ころがるようにいそいでいく。そのかたちそのものが命であるかのように。
それは。見失ってはいけないことだったのだ。
その夏の蝉時雨がやまずにいて。くりかえしねじを巻くようにふたりに降った。 その音にかき消されないように息をしながら。どうしてもという理由のなかで。 確かめてみなければいけないことを。なんだか追い詰められたようにそのことを。
ふたりしてさがした。これなのではないかと言って。そうなのかもしれないと。 しらいし君は言った。だけど確信がなかった。それはあまりにもぎこちなくて。 そのことが私ではなく彼をもっともっと苦しめていることに。気付かないふりを。 していたのかもしれない。私はなにを望んでいたのだろう。そのことのなにが。 私を救ってくれたというのだろう。まるでぬかるみのなかで泳ぎたがる魚のように。
もがいていた。息苦しく。もう還れないのではと不安になるくらい遠いところで。 ほんとうの水がほしくなる。ほんとうの雨がほしくなる。ずぶ濡れになるくらいに。
「帰る・・」としらいし君が言った。それはとても深刻に思い詰めたように言った。
バイクの音がして。なんだか逃げるようにそこからずっと遠くに消えていくのを。 耳を塞ぐこともせずにぼんやりと聴いていた。なんだかふっと懐かしくさえ思った。
彼の心臓のおとだ。ふるえながらもなにかを訴えるように激しくて哀しくて。
これが僕の『理由』だよって。その音がどんなにかそれを伝えたがっていたかを。
私はまだ知らずにいた。
・・・つづく・・・
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