| 2007年07月02日(月) |
その扉がうまく開かなくても |
ふぁーすときすというのは。海でもなく草原でもなく。喫茶店だった。
理数系だったそのひとが「いちど試してみるべきではないかと」言ったのだ。 どんな感じなのかということを。きちんとそれはレポートなのか実験なのか。 とにかくしてみるべきことだったからだ。そしてそれは案外と簡単なことであり。
いちど成功すると。もういくらでも出来そうだったから。もう一回やってみようと。 そのひとが目を輝かせて言うので。とうとう三回も試みてしまったのだった。
海岸通りのその店は『レオ』今もその町の潮の香のすぐそばに。あってほしい。 どんなに古びていようと。その扉がうまく開かなくても。そこにあってほしい。
わたしは還りたがっている。なんだかむしょうに還りたくてならない。
いま。ここにいて。今日が平穏に過ぎて。なにひとつ求める事もないけれど。 こころがとてもはるかな場所を見つめようと。はがゆいくらいにもがいている。
年をとることは素敵なことだと誰かが言ったんだ。 すこしも悲しいことではないのだと。それはほんとうのことだろうか?
わたしはせつなくてならない。どうしてこんなにせつないのかわからない。
わからないから。ときどきはこの哀しみを認めてあげたくもなる。
そのひとのくちびるはとてもとてもあたたかくてやわらかだった。
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