さわやかに。このうえないほどすっきりとよく晴れる。
昨夜とてつもなく不気味な夢を見て。うなされていたようだった。 声にならない声。私の呻き声のほうが、その夢よりも恐ろしくあるらしい。
朝になれば笑い話になっている。けれど。どんな夢だったか話したくてならない。
彼が薄暗い所にいて。鎌よりも大きなそれはとても丈夫そうな刃物を研いでいた。 話し掛けても何も応えてはくれない。とにかくみるみる間にその刃が鋭く光った。
殺されるって思ったんだ。どうしてだかわからないけれど私が死ななければいけない。 その理由がそこに満ちていた。タスケテって言えない。逃げる事もデキナイ夢。
彼はとても可笑しそうに笑った。朝ご飯のお味噌汁をすすりながら沢庵をかじり。 私もすこしだけ笑った。だけどちょっと緊張していたのでトマトを床に落としたり。
そうして。あまりにも青い空で雲ひとつない空だったから嬉しくなって。 今日こそは何処かに出掛けようと彼に言ったら。待っていたようにウンと言う。
あてもなく西に行く。いつだってそう。彼はあまり目標を定めないひとだから。 そのほうが楽しいのだと言う。どこかに着くだろう。そこに行けばいいのだと言う。
愛媛県に入ると。すぐに真っ青に光り輝く朝の海が見えた。思わず歓声をあげる。 シャシン写真と私は騒ぐ。ほれほれここがいいぞとクルマを停めてくれるのだった。
合歓の木の花が咲いていた。海風にゆれている。まるで孔雀の赤ちゃんのようだ。 はあはあ感動しながらその絵を写す。だけど気になる。背中に視線を感じるのが。 駄目なのだ。私はなんて身勝手なのだろう。彼のおかげでそこに立っているのに。
また走り出す。そしてとうとう大洲市まで行ってしまった。 以前にも一度来た事があった。あの時は山の公園にツツジがいっぱい咲いていたっけ。
今日は市街地へ行ってみた。確か昭和の時代の懐かしい横丁があるのを思い出したから。
そこで彼はとても喜んだ。メンコやらプラモデルやら鉄腕アトムの人形や。 ビールなんかタライに氷を入れて冷してある。飲みたいなあって彼は言った。
私は彼の写真を撮った。なんだかとても眩しくて。目を細めながら彼を撮った。
彼はちいさな子供のように目を輝かして。ここに来れてほんとうに嬉しそうだった。
私はお母さんみたいに。彼の後ろ姿を。ずっとずっと追いかけて行った。
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