ぽっかりと。静かな時間が贈りものみたいに届けられて。 たいらにたいらにしながら。横たわってばかりいたのだ。
誰も背中を押さない。誰もうるさく話し掛けてもこない。 ふとこれは間違いなのではないかと思うほど不自然なことを。
受けとめるにはすこしばかり時がひつよう。 なんだかカラダは催眠術にかかってしまったかのようで。 あなたはねむくなるどんどんねむくなると声ばかりきこえる。
村上春樹の『海辺のカフカ』を読みながらすいこまれるようにソコにいく。 猫と。とてもたいせつなことを話す。明日はもう話せないかもしれないこと。 記憶を積み重ねようとしながら。その記憶が薄れていくのがコワイなと思う。
ココハドコダロウと不安がる。ここにいてもいいのかとギモンが生じてくる。
そうして夢をみた。ながいながい坂道をひたすら空に向かって歩いていた。 背中になぜか彼を背負っている。彼はすこしも重くない。肩に手が温かい。
すれ違う見知らぬ人たちがみな微笑んで会釈をするので。私もにっこりと。 微笑返しをしながら。もうすこしでどこかに辿り着きそうな予感がしてくる。
空がとてつもなく広い。もしや鳥になろうとしているのかもしれないとも思う。
そしてそこでふと立ち止まってしまったのがいけなかった。見てはいけないものが。 そこらじゅうに灰色のかたまりになってそびえていたから。私は硬直してしまう。
踵を返す。この道は間違っていると初めて気付く。彼は眠っているのだろうか。 どうしていけないと教えてくれないのだろうか。いつもの彼らしくないではないか。
坂道を転げるように走った。とにかくもとの場所に帰らなくてはいけないのだ。
「ごめんね・・ごめんね・・」と涙が泉のように溢れ出てくる。
夢からかえる。今日はこんなにも清々しい風だとレースのカーテンがいう。
わたしはふたたび猫をさがしにいった。
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