サチコが彼と魚釣りに行ってキスを5匹釣って帰る。 まあまあなのが2匹とあとは赤ちゃんみたいにちっちゃいの。
「おかあたん、おちゃかなちゅった」と言って得意げな顔で。
ほんにほんに我が子ながら。この娘はお陽さまのように明るい子であった。 おかげでおかあたんの顔もほころぶ。おかあたんは幸せだなって思うのだ。
さっそくふたり台所でキスの天麩羅をすることにした。 ちっちゃいのもちゃんと食べてあげないとねと言って。
からりっと揚がったのに伯方の塩をつけながら食べる。 「おとうたん、ビール一緒に飲むでしゅね」と言って。 サチコが父親のコップに注ぐのを微笑ましく眺めながら。 おかあたんはバドの練習日であるためぐっと我慢している。
息子くんが突然に結婚するからと家を出てからもう一年が経った。 母親とはなんて身勝手なものだろう。サチコだけはと執着しつつ。 嫁ぐ日を心待ちになんかしてはいない。ずっとそばにいて欲しいと。 狂おしいほどに思う。サチコのいない我が家なんて考えたくもない。
けれどもそんな親の身勝手がいつまでもまかり通るわけもないから。 覚悟はしている。だけどそれはほんとうに淋しくてならない事だった。
親は子供に育ててもらうと言うけれど。まさにその通りだとすごく思う。 子育てに疲れて苛立つ事も多かった日々に。どれほど救ってもらったことか。 手をあげることもあった。泣き喚くのを叩き続けたこともあったというのに。
泣くだけ泣いた我が子の涙ほど愛しいものはなかったのだ。
おかあたんはおかげで母になれました。
しんちゃん。サチコ。ほんとうにありがとうね。
キスというさかなは。魚偏に喜ぶと書くのだそうです。
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