ゆらゆら日記
風に吹かれてゆらゆらと気の向くままに生きていきたいもんです。

2007年04月07日(土) 春にはひとつの桜餅

十代の頃。桜餅がすごく好きだった。
高校のすぐ近くに和菓子屋さんがあって。
友達と寄り道しては食べながらバスを待った。

そういえば弟も桜餅が好きだったな。
いつだったかそれはおとなになってからのこと。
彼もきっと懐かしいに違いないと思って。
たくさん買って彼のアパートを訪ねて行った。

あの店のだよ。あんた好きだったでしょって。
ちょっと誇らしげに目の前に広げて見せたけれど。

思いのほか彼は喜ばず。好きだったっけなって言って。
たったひとつだけ食べると。後はおまえにやるよなんて。

だから姉ちゃんはちょっとさびしくなって涙出そうだけど。
やけ食いみたいにして残り全部を平らげてしまったのだった。

胸がすごく苦しかった。ちっとも美味しくなくてしょっぱくて。
もう桜餅はいいやって思った。それ以来ずっと避けていたのかも。



あれからいったいいくつの春を越えたのだろう。

この春ふっと込みあげてくる懐かしさを感じて。
ほんとうに久しぶりに桜餅を買って食べてみた。

とてもおいしかった。葉っぱの塩加減と餡子の甘さと。
どうしてこんなに忘れていたのだろうと悔まれるほど。



あの町で潮風に吹かれていた青き春が。遠くはるかにある。
ひとを想って。我を嘆きもし。いつだって死ねるとさえ。
思いつめた頃。命の尊さなどこれっぽっちも知らずにいた。

そのくせ。あどけなく笑いあってバスを待つひと時。
指に残った桜餅の移り香を愉しむことも出来たのだ。


あといくつと。まだ来ぬ春を数えるのはもうよそう。

それよりも春には。毎年ひとつの桜餅を食べることにしよう。


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