やはり桜は咲いていた。立ち止まり仰ぎ見る事も出来ずにいたけれど。 咲いているのが嬉しい。ただただ静かに桜だけを想ってみたいと思う。
ふるきよき時代。桜尽くしの宴のことを絵巻物のように心に描いてみる。 高貴なひとびとあまた集うその庭には。いちめんの桜の花びらが敷かれ。 それはこの日のために他所から拾い集めてきたのだと言うのだけれど。
踏みしめるにはせつなすぎて。かといって立ち竦むには心浮き立つばかり。 花影に想いびとなど見つければ。この花びらを纏ってでも逢いたいものよと。 おんなは蝶のように舞ってみせる。はらはらとこのうえなく儚い恋のゆくてに。
落ちるのはひとひら。落ちるのはふたひら。涙まじりの花吹雪だった・・・。
この世に桜ほど儚い花はない。これほど潔く散ってしまえる花もない。
咲くならば桜だとずっと願っていたけれど。
ことしもどうやら野道の端に咲いてしまったように思う。
散れなくて枯れるのにも。ずいぶんと慣れてしまった。
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