音さえもうすぼんやりと静か過ぎるほどの雨の夜となった。 小糠雨と言うのだろうか。春雨じゃ濡れて行こうの雨かしら。
いやいやこれは絹の雨。やわらかなそれにすっぽりとくるまれてみたい。
ひかくてきおだやか。どんな日もあってこんな日はとてもありがたい。 はりつめてはりつめてしては。ぷつんとそれが切れてしまったあとの。 もう手探りでそれを繋ぐ事をしない自分が。好きであっていけないはずは。
ないのだ。
ふっとこころが旅をしたがる。いまならどこにだって行けるように思う。 あの時は賑やか過ぎたから嫌だった。どうしてあんなに騒がしかったのだろう。
すみちゃんは愚痴ばっかり言うし。りっちゃんはそれに相槌ばっかり打って。 かよはまあまあって宥めてばかりで。私はずっと日本海の蒼ばかり見ていた。
早朝まだみんなが寝ているうちにそっと起き出して。足湯に浸かりに行った。 胃腸に良いというお湯を両手でほこほこさせながらゆっくりと味わっていたら。
「ああ!あそこにおった!」とすみちゃんがおっきな声で私を見つけてしまい。 一気にまた賑やかになった。すぐ近くの川からは湯気がたっているのに鯉がいる。 晩秋の朝冷えにも。ここは春の小川なのだろうと。その風情がなんとも和やかだ。
「わぉ!あの鯉煮えるぜ!」すみちゃんがそれを見るなり叫んだ。
いやいやすみちゃん。ここは春の小川。でもいい。もういいから宿へ帰ろう。
後日談で。かよから聞いたすみちゃんのこと。 どうやら日頃の鬱憤が人並み以上に溜まっていたらしかった。 みんなに話せてずいぶんと楽になっただろうと言うことだった。
私はそんなことにも気づいてあげられず。ずっと機嫌悪くてごめんね。
またみんなで旅がしたいな。今度はどこへ行こうかな。
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